月村 了衛

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「あたしは羽衣お炎。こう見えても、江戸じゃあちっとは知られた稼業人さ」四年前に佐渡へと送られた無宿人。嘘か真か、それが想い人の青峰信三郎らしい。“羽衣”の異名を持つ女渡世人のお炎はそんな噂を聞きつけ、アメリカ製の最新式六連発銃・コルトM1847を携え信三郎を探す旅に出た。しかし佐渡の金山には、「オドロ様」なる奇怪な像を信仰する邪教が広がっていた。オドロ様一党と対立し、追い詰められたお炎はコルトを抜くが、やがて恐るべき陰謀に巻き込まれる―。濁流のようにうねる物語。圧倒的なリーダビリティを誇る時代長編!(「BOOK」データベースより)

 

単純にアクション場面を楽しむだけの、女性を主人公とした長編のアクション小説です。

 

近年は『東京輪舞』や『欺す衆生』といった歴史的な事実を題材にした重厚な小説を書かれている印象が強い作家さんですが、本作品は月村了衛の作品の中ではあまりお勧めしようとは思えない作品でした。

というのも『機龍警察』を小説家のデビュー作とする月村了衛の作品としては端的に言って軽すぎるのです。

 

 

同じアクションもので、舞台設定の荒唐無稽さではあまり変わらないと思われる『槐(エンジュ)』や『ガンルージュ』があります。

でもこの二作はその設定の安易さが失望感をもたらしはしたものの、アクション場面の面白さ、作品の質は保っていたと感じられました。

 

 

これに対し本作品はそうではありませんでした。

まず本作の登場人物として、主人公の羽衣お炎の人物像はまだ許容範囲内だとしても、本書のラスボスである「オドロ様」の正体、その背景に関してはどうにも十分に練られた設定だとは感じられません。

脇役として、お炎を助ける玄人衆も場当たり的です。さらに敵役である「オドロ様」の宮司を名乗る蝉麻呂の存在も降ってわいたとしか思えず、佐渡の役人たちに至っては全く存在感がないのです。

もう少し物語の世界感を大切にしてほしいし、この作者であれば十分に存在感がある世界を構築できるはずだと思われ、残念です。

でも、アクションメインで、物語の世界もアクションのための舞台にしか過ぎないと割り切ってとらえれば本書のような設定もそれで良しとすべきなのかもしれません。

ただ個人的に受け入れがたいというだけです。

 

本書の設定の安易さから、本書は作家としての経験が浅い時期に書かれたのか、とも思いましたが、先に書いたように、あの緻密に書き込まれた『機龍警察』がデビュー作であり、物語世界を濃密に作り上げる実力を持っている作家さんであることを考えればそうとは言えません。

また昭和の裏面意を公安警察の目線で描いた作品である『東京輪舞』が2018年10月の出版であることを考えると、出版年月が2018年1月である本書は作家としての経験は無関係でしょう。

ということは、この手の単純なアクション小説も月村了衛の作品系列の一つのジャンルとしてある、としか言えないと思われます。

 

東京輪舞』に続けて『悪の五輪』が2019年5月、『欺す衆生』が2019年8月であり、小説家としての第二期に入る前の月村了衛という作家の仕事だったと思われます。

ちなみに、本書とは別に、第十七回大藪春彦賞を受賞した『コルトM1851残月』という作品があります。

本作『コルトM1847羽衣』とは全く別の物語であり、共通点は「コルトM1851」が登場するというだけであって、それぞれ独立した物語だそうです。

 

 

[投稿日]2020年03月09日  [最終更新日]2020年3月9日
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