『エンドロール 警視庁FCⅢ』とは
本書『エンドロール 警視庁FCⅢ』は『警視庁FCシリーズ』の第三弾で、2025年7月に毎日新聞出版から400頁のハードカバーで刊行された、長編の警察小説です。
軽めの話が多い今野敏の作品の中でも本書は特に軽さを感じる、今一つ感情移入できない作品でした。
『エンドロール 警視庁FCⅢ』の簡単なあらすじ
映画人×警察官たちがおくる新時代の仕事小説。東京都内でハリウッド映画が撮影されることになった。監督は巨匠リーアム・バーク。日本での撮影は「世界の丑井勝」監督が務めるビッグ・プロジェクト。ところが、脚本も届かぬまま思わぬ事態が発生ー特命を受けたFC室のメンバーが奔走する!あらゆる職業人への敬意と感謝を込めて。待望のシリーズ第3弾!(「BOOK」データベースより)
『エンドロール 警視庁FCⅢ』の感想
本書『エンドロール 警視庁FCⅢ』は、今野敏の数多い作品群のなかでも特に軽さを感じた作品だったと言えます。
ただ、あまり高い評価はできませんが、何も考えずに気楽に読み飛ばすにはいい作品だと思います。
タイトルにもなっている「警視庁FC」の「FC」とは、フィルム・コミッションのことであり、「地域活性化を目的として、映像作品のロケーション撮影が円滑に行われるための支援を行う公的団体」のことを言います。
詳しくは、ウィキペディアを参照してください。そこでは「日本のフィルム・コミッションの運営に関する課題」など、現在(2017年頃)の問題点などの課題なども載っています。
本書は、そうしたフィルム・コミッションを警視庁内に作ったとの設定の下、特命により集められた五名が本来の業務との兼務のもと撮影のために奔走する姿が描かれています。
このFC室はもと通信指令本部の管理官だった長門達男を室長としています。この通信指令本部の管理官という立場は「夜の警視総監」とも呼ばれるほどの権限を有しているのだそうです。
そして長門室長のもと、組織犯罪対策部・暴力団対策課所属の山岡諒一巡査部長、交通部駐車対策課の島原静香、交通機動隊所属の白バイ乗りの服部靖彦巡査部長、警視庁地域部地域総務課所属の楠木肇巡査部長がいます。
そして、この楠木肇が本書の主人公ともいえる存在であり、普段は楽をすることだけを考えている男なのですが、ここというところで意外なひらめきを見せる存在なのです。
この楠木は、本書では臨時に欠員補充のために日々パトカーに乗って職質をする遊撃特別警ら隊へと担当替えになっています。
その遊撃特別警ら隊での楠木の相棒が遊撃特別警ら隊班長の蒲生武志警部補であり、コールサインを「遊撃3」というパトカーに乗務しています。
そうした警視庁FC室のメンバー五人が、今回は「半減期の夏」という映画を撮った人気映画監督のリーアム・バークの新作映画「マゼンダシティ」を日本の、それも渋谷を舞台にした映画を撮るために奔走するのです。
また、この映画には日本側監督としてやはり人気のある丑井勝監督が参加するという話になり、一段と盛り上がっているのです。
ところが、日本は映画の撮影に関してはかなり遅れており、かつて「ブラック・レイン」という映画を大阪で撮った際に、日本側の手際の悪さにシドニールメット監督がもう二度と日本では映画は撮らないと激怒したという事件があったことが紹介されています。
この事件は素人の私でも知っていたくらい有名な話であり、映画好きとしては残念な話でもあります。
そして、その事件から少しは進歩したものの、基本的にはあまり変わっていない、ということが語られているのです。
そうした状況の中、成田空港には着いているはずのリーアム・バーク監督が行方不明になったり、渋谷でカーアクションを撮りたいというリーアム・バーク監督の依頼を実現させるために渋谷署や渋谷区役所などの許可を求めて奔走する警視庁FC室の姿が描かれます。
本書の上記のような物語の流れそのものはお仕事小説のようでもあり、映画撮影の背景などのトリビア的な知識が描かれている楽しみもあり確かに楽しいのです。
しかしながら、話の流れそのものは、作者の今野敏の筆のままに、かなり気楽に進みます。
なにせ、FC室長の長門自身が一見かなりいい加減なのです。何とかなるという一言で、楠木をあちこちに送り込んで交渉をさせ、結果として望みの流れへと進ませます。
こうした流れを楽しめるかどうかで本書の評価はかなり変わると思われます。
私としては、気楽さがちょっと過ぎるのではないかと感じ、軽さを感じる作品という評価になってしまいました。