金子 成人

イラスト1
Pocket

文庫

双葉社

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは ごんげん長屋つれづれ帖【一】かみなりお勝 (双葉文庫) [ 金子成人 ] へ。


『ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ』は、お勝という三十八歳の女性を主人公とする人情時代小説シリーズです。

誰にも言えない過去をもつものの、男勝りで誰からも頼られる人柄のお勝を巡る物語はかなり面白く読んだ作品でした。

 

んげん長屋つれづれ帖シリーズ』について

 

ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ(2021年06月26日現在)

  1. かみなりお勝
  2. ゆく年に

 

『ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ』の主人公はお勝といい、根津権現門前町の根津権現社に近いところにある「岩木屋」という質屋の番頭をしています。

このお勝は、実家は馬喰町で「玉木屋」という旅館をやっていましたが二十年前に近所から出た火事のために二親は逃げ遅れ、助けに飛び込んだ三つ違いの兄の太吉もまたともに焼け死んでしまいました。

そのときお勝は奉公先の旗本家にいたため無事でしたが、以来、縁者とも疎遠になり、三十八歳になる現在まで一人でいます。

 

お勝の住まいは、同じ根津権現門前町の南端にある、路地を挟んで北側に九尺三間、南側に九尺二間という間取りで並んだ二棟の六軒長屋で、正式名称は「惣右衛門店」、通称を「ごんげん長屋」といいます。

お勝はその「ごんげん長屋」の北側の棟の真ん中あたりに、十二歳のお琴、十歳の幸助、七歳のお妙という三人の子と共に住んでいます。

このお勝の人柄について作者の金子成人は、お勝の兄の太吉を慕っていた銀平というお勝の三つ年下の目明しに第一巻の始めで、お勝は「餓鬼の時分から小太刀をものにして、近所の年上の悪餓鬼からも恐れられてた」と言わせています。

また、今のお勝は根津の方では「かみなりお勝」と呼ばれているそうだ、とも言わせているのです。

それだけお勝自身が鉄火肌でもあり、親分肌でもあるといえそうです。

 

『ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ』の登場人物としては、まず「ごんげん長屋」の面々は、各巻の最初に長屋の見取り図があり、住人の名前も書いてあります。

その中で主だった人物としては、大家の伝兵衛、それに手習の師匠をしていますが金がないために厠の隣の賃料が安い部屋に住む沢木栄五郎がいます。

その他に挙げるべき人物としては、善光寺町にある料理屋「喜多村」があり、その隠居で「ごんげん長屋」の家主でもある惣右衛門がいます。

そして、お勝の過去にかかわる旗本建部左京亮家の用人の崎山喜左衛門や、香取神道流の近藤道場師範の妻で幼馴染の沙月などがいます。

その他にもいますが、各巻の中で語られていくことになります。

 

『ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ』でお勝が番頭として奉公する「岩木屋」は、質流れになった質草を損料を取って貸し出す「損料貸し」も営む「損料屋」でもありました。

主人は吉之助といい、慶三弥太郎という手伝い、それに初老の蔵番の茂平と修繕担当の要助らがいます。

これらの面々や、「岩木屋」へやってくるお客らの巻き起こす問題ごとにどうしても首を突っ込み、世話を焼くことになるのが主人公のお勝なのです。

 

本『ごんげん長屋つれづれ帖シリーズ』の作者金子成人は高名な脚本家でもあり、人気シリーズの『付添い屋・六平太シリーズ』も書かれています。

ということは、痛快小説のみならず人間ドラマもお手の物でしょうが、あらためて書かれた人情話はいかがなものかと思っていたところ、さすがに読ませる作品でした。

 

 

ところで、本シリーズは根津権現門前町を舞台としていますが、根津権現町といえば、先般西條奈加が第164回直木賞を受賞した『心淋し川(うらさびしがわ)』も根津権現付近の千駄木を舞台にした作品でした。

また、明治10年の根津遊郭を舞台に、御家人の次男坊だった定九郎の鬱屈を抱えながら生きている様子を描きだす、第144回直木賞を受賞した木内昇の『漂砂のうたう』という作品もあります。

 

 

また、田牧大和の『鯖猫長屋ふしぎ草紙シリーズ』も根津権現町の南隣の根津宮永町を舞台にした作品でした。

 

 

他にも根津という町を舞台にした作品はかなりの数がありそうです。この土地自体に人情話が生まれやすい土壌があるのでしょう。

ともあれ、金子成人という作者の、なかなかに面白そうな新シリーズが始まりました。

ゆっくりと読み続けたいシリーズになると思われます。

[投稿日]2021年06月23日  [最終更新日]2021年6月26日
Pocket

おすすめの小説

おすすめの人情小説

立場茶屋おりきシリーズ ( 今井 絵美子 )
品川宿門前町にある「立場茶屋おりき」の二代目女将のおりきの、茶屋に訪れる様々な人との間で織りなす人間模様が、美しい条件描写と共に語られます。
あきない世傳金と銀 シリーズ ( 高田 郁 )
高田郁著の『あきない世傳金と銀 シリーズ』は、大坂の呉服商を舞台にした一人の少女の成長譚です。武庫川河口域の津門村で、学者であった父の庇護のもとに育った幸でしたが、享保の大飢饉で兄を、続いて疫病で父を亡くし、九歳で大坂天満の呉服商「五鈴屋」へ女衆として奉公に出ることになるのでした。
とんずら屋シリーズ ( 田牧 大和 )
隠された過去を持つ弥生という娘の「夜逃げ屋」としての活躍を描く、連作の短編集です。痛快活劇小説と言えるでしょう。この作家には他にからくりシリーズという娘が主人公のシリーズもあります。
上絵師 律の似面絵帖 シリーズ ( 知野 みさき )
知野みさき著の『上絵師 律の似面絵帖 シリーズ』は、上絵師として独り立ちしようとする律という娘の、一生懸命に生きている姿を描く長編の人情小説です。
銀の猫 ( 朝井 まかて )
身内に代わって年寄りの介抱を助ける奉公人である介抱人のお咲は、自分の容姿を気にかけることしかしない母親に頭を悩ませながらも、年寄りの介抱に精を出す日々でした。

関連リンク

笑いと人情たっぷりの時代小説・金子成人さん「ごんげん長屋つれづれ帖」シリーズ もっと人にやさしくなれる
新シリーズ「ごんげん長屋つれづれ帖」では、「かみなりお勝」を中心に、長屋で巻き起こる笑いと人情を描きます。小説の難しさとおもしろさ、作品に込めた思いを伺いました。
大河ドラマ「義経」の人気脚本家・金子成人が描く江戸のほろりと泣ける人情譚
シナリオライターから、時代小説を執筆するようになった人物は多い。しかし、「付添い屋・六平太」シリーズで、金子成人が参入したときは驚いた。現代物のシナリオライターのイメージが強かったからだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です