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木内 昇 雑感

出版社勤務の後、フリーの編集者となり、その後1997年からは自ら「spotting」というインタビュー誌を主宰されているそうです。

2008年に発表された『茗荷谷の猫』が各方面で絶賛され、 2009年には早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞を受賞し、2011年に『漂砂のうたう』で第144回直木賞を受賞されています。

この『漂砂のうたう』では「閉塞感を感じさせる物語」を書きたかったとインタビューに答えておられますが、『地虫鳴く』は新選組の中でもこれまで名前も知らなかった隊士を描き、『櫛挽道守』では名も知らぬ職人の生きざまを描いていて、表舞台ではない光のあたらない人間を描くことが得意な作家さんなのかもしれません。

地の文ではなく、「仕草とか言葉遣い、動きの癖」で人物の内面を表したいと語っておられるように、説明的な文章ではなく陰影のある情景描写が特徴的ではないでしょうか。またリズム感があり、とても読みやすい文章です。しかし、少なくとも私の既読の範囲では決して明るい物語ではなく、ストーリーの変化に富んだエンターテインメント性の強い作品を求める人には向かないかもしれません。

ただ、未読の『笑い三年、泣き三月。』は「戦後すぐのストリップ小屋を舞台にした面白おかしい物語」らしいので、少々タッチが異なるかもしれません。

[投稿日] 2015年04月09日  [最終更新日] 2015年4月9日

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