東野 圭吾 雑感
1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。
1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞。
2006年、ガリレオシリーズ初の長編「容疑者Xの献身」で第134回直木賞受賞。同書は第6回本格ミステリ大賞、
2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」各第1位にも輝いた。
(東野圭吾プロフィール|東野圭吾ガリレオシリーズ特設サイト『倶楽部ガリレオ』)
あらためての紹介も必要ないほどのベストセラー作家です。
その作品の多くがテレビや映画と映像化され、小説の域を越えた活躍をされている作家さんです。
この作家ははじめはいわゆる本格推理と言われる作品を発表されていました。この時期の作品では『白馬山荘殺人事件』などを読み、私が本格派は好みではなかったために、しばらくは東野圭吾の作品を読むことはありませんでした。
その後我が家にあった『レイクサイド』と言う作品を読んだのが2010年の初め。この作品が案外に面白く、続いて『片思い』『幻夜』と読み進めました。このあたりの作品は、当初の本格派推理とは異なり、若干社会性を帯びてきている頃だったのでしょう。思いのほか私の好みに合い、他の作品もいろいろと読むようになったのです。
調べてみると1998年に刊行された『秘密』のヒットにより一躍注目される作家の仲間入りをしたようです。『レイクサイド』を始めとする上記の作品は『秘密』のあとに刊行された作品であり、『秘密』あたりが変化の時期だったのでしょう。そう言えば『秘密』は人格の転移をモチーフにした作品であり、若干SFめいた作品と言えなくもありません。その発想のユニークさが発現したのでしょうか。
中でも第134回直木賞受賞を受賞した作品である『容疑者Xの献身』は見事につぼにはまり、その後の『新参者』でとどめを刺されました。その後、十全に書かれた本格派の作品も含め出版されている殆どの作品は読んだつもりです。読み落としは数冊しかないでしょう。
言うまでもなく、東野圭吾作品は多くの賞を受賞し、冒頭に書いたようにさまざまな形での映像化も為されています。それほどに人気作家ではある東野圭吾です。その作風の変化は本格派から社会性を帯びた作風へとの変化に即したものかもしれません。いや、それも一因でしょうが、東野圭吾のアイデアの見事さを支える文章構成力、そして人間心裡を描く文章力という実力に裏打ちされたものなのでしょう。
東野圭吾の作品にはシリーズものは少ないという話を聞きます。しかしながら『加賀恭一郎シリーズ』『ガリレオシリーズ』という二大シリーズの他に『天下一大五郎シリーズ』や『浪花少年探偵団シリーズ』、『笑小説シリーズ』などがあるようです。
社会派の推理小説作家としては松本清張を始めとして多くの作家がいます。中でも近年読み応えのある作家としては『64(ロクヨン)』などで有名な横山秀夫がいます。更に新しい作家としては横山秀夫を損壊するという柚月裕子の『最後の証人』から始まるシリーズは読み応えがありました。