『アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子』とは
本書『アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子』は『組織犯罪対策課 八神瑛子シリーズ』の第二弾で、2012年3月に355頁で文庫化された、長編の警察小説です。
『アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子』の簡単なあらすじ
警視庁上野署の八神瑛子。容姿端麗ながら暴力も癒着も躊躇わない激裂な捜査で犯人を挙げてきた。そんな彼女に、中米の麻薬組織に狙われる男を守ってくれ、という依頼が入る。男を追うのは残虐な手口で世界中の要人や警官を葬ってきた暗殺者。危険すぎる刺客と瑛子はたった一人で闘いを始める…。爆風を巻き起こす、炎熱の警察小説シリーズ第二弾。(「BOOK」データベースより)
メキシコ産の覚せい剤が大量に出回っているらしい。千波組若手幹部の甲斐によれば、メキシコの麻薬組織であるソノラ・カルテルと関西の組織である華岡組とが手を組んだというのだ。
そうした中、ソノラ・カルテルのメンバーの一人が組織を裏切り、日本に逃れてきたというのだ。
そこで、ソノラ・カルテルは“グラニソ”という殺し屋を日本に送り込んだらしく、またその裏切り者は印旛会に匿われているというのだった。
『アウトクラッシュ 組織犯罪対策課 八神瑛子』の感想
『組織犯罪対策課 八神瑛子シリーズ』の項では逢坂剛の『禿鷹シリーズ』の禿富鷹秋刑事との類似を書いたのだけれど、本書に至っては『禿鷹シリーズ』同様にメキシコのマフィア、そしてメキシコのマフィアから依頼された殺し屋まで登場します。勿論物語自体は全く異なるものは当然ですが。
そして、前巻『アウトバーン』で書いたと同様に、本巻も登場人物として警察官である八神瑛子らが活躍するという意味では警察小説ではあるのですが、ミステリー性重視というよりも、ストーリー性が強いアクション小説というべきでしょう。
前巻『アウトバーン』で八神瑛子は女子大生刺殺事件の犯人逮捕に活躍し、その結果、本書『アウトクラッシュ』では千波組の組長である有嶋章吾に会うことになります。
そして、夫雅也の死の真相を暴くために有嶋の依頼を受け、メキシコマフィアが送り込んできた“グラニソ”という殺し屋に関する情報を収集することになるのです。
そこでは関西の一大組織である華岡組と華岡組と組んだメキシコのソノラ・カルテルから供給される覚醒剤に悩まされる関東の組織との対立という構図がありました。
本書『アウトクラッシュ』のストーリーの流れを大きくとらえると、グラニソと八神瑛子たちとの対決という構造であり、そこで描かれるのは前述のように前巻以上のアクションであり、バイオレンスです。
その流れの中に、上野署署長富永昌弘の八神瑛子に対する新たな監視者として西義信が加わりますが、この男の存在は若干ものたりなく感じてしまったのは残念でした。
またソノラ・カルテルを裏切り印旛会に匿われているルイス・キタハラ・サントスという男まで登場するに至り、八神瑛子の行動は警察官としての捜査ではなく、まるで千波組の手助けをしているかのような行動になっています。
そうした行動の先には、比嘉という半グレを伴ったグラニソとキタハラを守る広瀬という元沢渡会の組員らとの衝突であり、バイオレンスでした。
八神瑛子の行動は一貫しており、それは小気味いいものです。通常のミステリーとしての警察小説ではなく、徹底したエンターテインメント小説としての面白さを持った作品としての話です。