『薔薇盗人』とは
本書『薔薇盗人』は、2000年8月に新潮社から刊行され、2003年3月に新潮文庫から352頁の文庫として出版された短編小説集です。
『薔薇盗人』の簡単なあらすじ
「親愛なるダディと、ぼくの大好きなメイ・プリンセス号へ」-豪華客船船長の父と少年をつなぐ寄港地への手紙。父の大切な薔薇を守る少年が告げた出来事とはー「薔薇盗人」。リストラされたカメラマンと場末のストリッパーのつかの間の、そして深い哀情「あじさい心中」。親友の死を前にして老経営者に起きた死生への惑い「死に賃」。人間の哀歓を巧みな筆致で描く、愛と涙の6短編。(「BOOK」データベースより)
『薔薇盗人』について
本書『薔薇盗人』は、人と人とのつながりについて、幾種類もの見え方を示してくれている作品集です。
「あじさい心中」
踊り子が自分語りをする場面は、浅田次郎らしい哀切に満ちた場面です。会ったばかりの男と女の交情の結末は思わずうなってしまいました。
「死に賃」
金儲けのために一生懸命に働いてきた主人公の、死の床での話は夢か現実か。主人公に尽くした秘書の美しさがファンタジーの中に光る好編です。
「奈落」
死んだ男の会社の社員らや役付き、社長や会長達の、死んだ男をめぐるそれぞれの思惑を絡めながらの会話のたびに、隠された秘密が少しずつ明かされていきます。全編会話文だけの、サラリーマンの悲哀も漂う、少々考えさせられる短編です。
「佳人」
ショートといっても良いくらいの、十五頁ほどしかない短編です。しかし、ショートだからこその意外なオチが待っていました。
「ひなまつり」
弥生の視点で語られる本作品は、昭和の匂いが強く漂う小品です。もうすぐ中学生なろうとする女の子の一途な思いを描いてあります。
「薔薇盗人」
すべてが無垢な子供の視点で、客観的に記されています。そこには、母親が家庭訪問に来た先生と長いこと話しこんでいたりする姿も報告してあるのです。
本書『薔薇盗人』は冒頭に述べたように、どの物語も人と人とのつながりが幾種類もの見え方があることを教えてくれる作品集です。
特に冒頭の「あじさい心中」が浅田次郎らしさが一番出ている作品に思え、心に残りました。
