辻堂 魁

夜叉萬同心シリーズ

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三つの物語からなる連作の短編集です。この作家の『風の市兵衛』シリーズの面白さからして、かなりの期待を持って読んだのですが、残念ながら期待に応えた作品ということはできませんでした。

北町奉行所隠密廻り同心である萬七蔵(よろずななぞう)は、一刀流の免許皆伝という腕前を買われ、奉行直属の隠密御用を命じられている「殺しのライセンス」を持つ同心です。

旗本の部屋住み連中の集まりである「紅組」の乱暴狼藉を懲らしめる典型的な勧善懲悪の物語の「桜花」、瑞龍軒清墨という絵師が暗黒亭黒主という号で描いていた春画を巡る事件の「かどわかし」、磐栄藩用人の斎藤弥兵衛という侍から’蜉蝣’と呼ばれている辻斬りを切るように頼まれる「冬蜉蝣(ふゆかげろう)」という三つの物語です。

振り仮名交じりの漢字を多用した文章で細かなところまで描写されている文章が目につくのですが、残念ながら物語の内容にまでは関心が移りません。普通の時代小説でしかない、と感じてしまいました。残念ながら、辻堂魁という作者の魅力が発揮された物語ではありませんでした。

というのも、本書は辻堂魁のデビュー作だったのです。魅力的な物語である『風の市兵衛シリーズ』は、本書の二年後に書かれていますので、少なくとも2014年6月の時点では第四作が出ている『風の市兵衛』シリーズは面白さが一段と増していることでしょう。

本書は痛快時代小説と言っていいのでしょう。
似たような設定の小説としては鳥羽亮の『剣客同心シリーズ』が思い浮かびます。正面から殺しの許可があるわけではないのですが、当初は見習い同心であった主人公の長月隼人も、第一作目の終わりには定町廻り同心となり、悪から恐れられる同心となっていきます。

また、ちょっと設定は異なりますが、風野真知雄の描く『若さま同心徳川竜之助シリーズ』もあります。こちらは健康的な明るい太陽の元で生きている感が満載の主人公です。シリアスな雰囲気の本書や『剣客同心』シリーズが好みでない方はこうした捕物帳的な、軽く読める作品もありかもしれません。

[投稿日]2015年10月05日  [最終更新日]2018年6月28日
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痛快という側面を強調すると数多くの作品が該当するでしょう。そうした中から、近頃身にしやすいものを集めてみました。ただ、『桃太郎侍』だけは一昔前の作品ではあるのですが、誰しも異論のない痛快時代小説の代表として挙げてみました。
桃太郎侍 ( 山手樹一郞 )
もう古典といってもよさそうな、勧善懲悪の典型ドラマでもあります。高橋英樹主演のテレビドラマは多くの人気を博しました。
吉原御免状 ( 隆慶一郎 )
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はぐれ長屋の用心棒シリーズ ( 鳥羽 亮 )
主人公は剣の達人だが、隠居の身です。だから立ち回りも時間を経ると息切れしてしまいます。だから、同じ年寄りたちが助け合い、戦うのです。隠居とは言えまだ五十歳代の登場人物です。還暦を過ぎたわが身としては、少しの寂しさが・・・・。
三田村元八郎シリーズ ( 上田 秀人 )
大岡越前守忠相の密命を受けた、元定町廻り同心の三田村元八郎が将軍継承に関わる陰謀に立ち向かう重厚な筆致のエンターテインメント小説です。
居眠り磐音江戸双紙シリーズ ( 佐伯 泰英 )
佐伯泰英作品の中でも一番の人気シリーズで、平成の大ベストセラーだそうです。途中から物語の雰囲気が変わり、当初ほどの面白さはなくなりましたが、それでもなお面白い小説です。
口入屋用心棒シリーズ ( 鈴木 英治 )
浪々の身で妻を探す主人公の湯瀬直之進の生活を追いながら、シリーズの設定がどんどん変化していく、少々変わった物語です。ですが、鈴木節は健在で、この作家の種々のシリーズの中で一番面白いかもしれません。

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