江戸っ子に大人気のらくだの見世物。駿太郎にせがまれて、小籐次もおりょうやお夕一家とともに見物に出向いた。そのらくだが二頭、何者かに盗まれたうえに身代金を要求された!興行主に泣きつかれた小籐次はらくだ探しに奔走するが、思いがけず己の“老い”に直面する事態となる。新たな局面を迎える、好評シリーズ第6弾!(「BOOK」データベースより)
新・酔いどれ小籐次シリーズの第六巻となる長編の痛快時代小説です。
今巷では両国広小路の“らくだ”なる珍しい見世物が話題になっているらしく、それを見に行きたいという駿太郎やおりょうの願いに応え、皆で見に行くことになります。元厩番だったからなのか、らくだになつかれていた小藤次たちでした。
後日、月二回の豊後森藩の剣術指南役としての役務を終えた小藤次には、帰りに寄った久慈屋で、大旦那の晶右衛門からお伊勢参りに同道して欲しいとの話が持ち上がります。
そこに、二頭のらくだが盗まれたとの話がもたらされ、興行元である藤岡屋から、らくだがなついていた小藤次なら探せると、らくだの探索を頼まれます。
らくだが寝泊まりしていた小梅村の農家を訪ねると、二百両を払えとの手紙が見つかります。大坂かららくだの世話をしてきた二人が怪しいとにらむものの、二人はもう帰ってしまったといいます。こうなれば、らくだの餌が大量にいるだろうし、野菜を仕入れる先から見当をつけようとする小藤次たちでした。
今回の小藤次は江戸では珍しい“らくだ”の盗難騒ぎに巻き込まれます。
その際、駿太郎がクロスケを連れ、らくだの匂いの後をたどるため、横川沿いに探索に出て、近所で野菜が盗まれている一角にらくだが隠されている農家を見つけるなど、いつものシリーズ内容とは少々異なり、ほのぼのとした雰囲気の漂う一編となっています。
また、特別に小藤次の魅力が発揮された一編だとは言えないかもしれませんが、駿太郎の見つけた“らくだ”を盗み出した一味を捕縛するために向かった際に落馬して腰を強打するなど、小藤次の老いを感じさせる場面も用意してあり、シリーズ内での小藤次の立ち位置が若干変わってきた一冊でもあるようです。
とは言え、あくまでスーパーマンである小藤次の魅力そのものは健在であり、駿太郎の成長とあわせ、心地よい読み物であることに間違いはなさそうです。