新兵衛長屋界隈で、赤目小籐次を尋ねまわる怪しい輩がいるという。小籐次ネタを他所の読売屋にかすめ取られていた空蔵は、これは大ネタに化けるかもしれないと探索を引き受けた。そして小籐次と因縁のある秩父の雷右衛門が絡んでいると調べ上げたが、そこで空蔵は行方を絶った。空蔵の身に一体なにが?好調のシリーズ第5弾! (「BOOK」データベースより)
新兵衛長屋界隈で、赤目小籐次について尋ねまわる怪しい男の話を聞き、読売屋の空蔵に妖しい男について調べるように頼むと、ネタに困っていた空蔵は一も二もなく引き受けます。
一方、小藤次と駿太郎は、やっと望外川荘近くの寺の本堂という稽古場を見つけ住職の了解も得ることができたのです。そこに、ヤクザが押し掛けてきますが、住職の思惑通りに、そのヤクザを追い払う小藤次と駿太郎、そして二人の弟子たちでした。
他方、江戸の町の四か所で同時に押し込み強盗が発生します。その押し込みは、何故か小藤次を恨み、敵と狙うのでした。探索を続けていた空蔵は、この押し込みらの情報に行きあたり捕まってしまいます。
小藤次は、豊後森藩からの帰藩要請などもありましたが、火の粉を払う必要もあって空蔵の救出へと向かうのでした。
新しくなったこのシリーズは、結局旧来のシリーズとそれほど異ならないままに落ち着いたようです。ただ、望外川荘でのおりょうとの生活があり、更に駿太郎の成長、それに新しい弟子二人が増えたことがこれまでと異なる点ですね。
そうなると、居眠り磐根シリーズの磐根と空也、それに密命シリーズの金杉惣三郎と清之助親子といったこれまでのシリーズとの区別化をきちんとしてもらいたいものです。
勿論、磐根シリーズの松平辰平、重富利次郎といった弟子たちと本シリーズの創玄一郎太や田淵代五郎という弟子たちとの区別化も同様です。
そしてまた、今ひとつ物語の芯がはっきりとしていない気がします。もちろん、痛快小説としての面白さを持っていることは否定しませんが、シリーズ全体の大きな謎なり、敵なりが見えないのです。
もしかしたら、シリーズを通した大きな謎などは設定しないままに、巻ごとの小藤次の活躍が描かれるのかもしれませんが、創作のハードルは高くなる気がします。