青山 文平 雑感
『青山文平』のプロフィール
1948(昭和23)年、神奈川県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。経済関係の出版社に18年勤務したのち、フリーライターとなる。2011(平成23)年、『白樫の樹の下で』で松本清張賞を受賞しデビュー。2015年、『鬼はもとより』で大藪春彦賞、2016年、『つまをめとらば』で直木賞を受賞。2022(令和4)年、『底惚れ』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞を受賞した。江戸中期の成熟した時代にあってなお、懸命にもがき生きる人々を描く作家として、熱烈なファンが多い。著書に『かけおちる』『伊賀の残光』『春山入り』『励み場』『半席』『跳ぶ男』『遠縁の女』『やっと訪れた春に』『江戸染まぬ』『本売る日々』『泳ぐ者』などがある。( 青山文平 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )
『青山文平』について
江戸時代の天明期前後ともなると武士が武士であるだけでは生きていけない時代になっており、だからこそドラマが生まれやすいから、という理由で青山文平作品は天明期またはその前後の時代を背景とすることが多いそうです。
確かに、出版されている本を読んでみると武士であることに忠実であろうとすることにより巻き起こる様々な軋轢、相克が描かれています。
また、『つまをめとらば』での2016年の直木賞受賞時のインタビューでは、「銀のアジ」を書きたいとも言っておられます。
死んだ青魚ではない銀色をした生きているアジ、英雄ではない大衆魚としてのアジを書きたいということです。従って、「戦国と幕末は抜けている」のだそうです。
その文章は清冽で、無駄がありません。また、会話文の合間に主人公の心理描写や過去の思い出の描写が挿入されたりと、心裡への接近が独特で、焦点がぼけるという異論もありそうですが個人的には状況の語り口が見事だと思っています。
全般的に侍の存在自体への問いかけという手法ですので、痛快娯楽小説を探しておられる方には向かないかもしれません。
あくまで、じっくりと言葉の余韻を楽しみつつ、物語の世界に浸る読み手でないと途中で投げ出すかもしれません。
でも、軽い読み物を探している方にもできればゆっくりと時間をとって読んでもらいたい作家さんです。