『蝉しぐれ』とは
本書『蝉しぐれ』は1988年5月に刊行されて、2017年1月に上下二巻で586頁の新装版として文庫化された、長編の時代小説です。
『蝉しぐれ』の簡単なあらすじ
「どうした?噛まれたか」「はい」文四郎はためらわずその指を口にふくむと、傷口を強く吸った。無言で頭を下げ、小走りに家へ戻るふくー。海坂藩普組牧家の跡取り・文四郎は、15歳の初夏を迎えていた。淡い恋、友情、突然一家を襲う悲運と忍苦。苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を描いた、傑作長篇小説。(上巻: 「BOOK」データベースより)
不遇感を抱えながら、一心に剣の稽古にはげむ文四郎。18歳の秋、神社の奉納試合でついに興津新之丞を破り、思いがけない人物より秘剣を伝授される。前途に光が射しはじめるなか、妻をめとり城勤めに精をだす日々。そこへ江戸にいるお福さまの消息が届くー。時代を越えて読み継がれる、藤沢文学の金字塔。(下巻: 「BOOK」データベースより)
『蝉しぐれ』の感想
本書『蝉しぐれ』は、もしかしたら藤沢周平作品の中では一番有名かもしれない、長編の時代小説です。
そして、それだけの面白さを持った作品であって、「藤沢文学の香り高い情景を余すところなく盛り込んだ名作
」と言われるのも納得する物語でした。
主人公の牧文四郎と、その幼馴染のふくとの秘められた恋情を軸に、海坂藩の政変に巻き込まれていく二人やその周りの人々が情感豊かに描かれています。
藤沢周平の作品はどの作品も名作ぞろい、と言っても過言ではないと思うのですが、どれか一冊を挙げろと言われれば、私は本書を挙げるかもしれません。
それほどに惹き込まれ、また感動した作品でもありました。
ちなみに、本書『蝉しぐれ』は市川染五郎と木村佳乃とで映画化されて、2005年に一般公開されました。また、2003年にはNHKで連続ドラマ化もされています。