葉室 麟 雑感
正道の時代小説を書かれる人という印象です。
時代劇の雰囲気を醸し出す情景描写は藤沢周平を彷彿とさせ、よく練り上げられたであろう文章は一言で多くを語っています。
どうも根底に漢文の素養のある方らしく、端々にその素養が見え隠れします。だからと言って文章が堅くなっているというのではありません。人を見る眼が真摯で、なお人物の立ち位置を簡潔に語っていると感じるのです。
清廉な人物が物語の中心におり、それを取り巻く人々の思惑の中で翻弄されていく、そうした物語が多いようです。そうした中で、人情小説と言っても間違いではないような細やかな人の想いが語られています。
時代小説といい、人情小説といっても共に人を描いていることに変わりは無く、人の人に対する想いが語られるのでしょう。
どの主人公も自分自身を失わず、凛として生きていて、その生きざまに惹かれます。その最たるものが「蜩の記」の戸田秋谷であり、その家族なのでしょう。
面白いです。是非読むべき作家さんの一人です。
2017年12月23日、葉室麟氏が亡くなられたそうです。
新聞によりますと、体調を崩して入院したおられたとのことです。享年六十六歳ということですが、あまりにも早すぎますね。残念です。
ご冥福をお祈りいたします。
[投稿日] 2014年12月26日 [最終更新日] 2018年11月18日