落馬して打撲傷を負った小籐次は、久慈屋夫妻、おりょうとともに熱海に湯治に行ったことで恢復し、以前と変わらぬ生活を送れるようになっていた。
そんなある日、瀬戸物町で火事騒ぎが起こり、そのさなかに料理茶屋の娘が行方知れずになった。そもそも火事騒ぎはどうやら付け火で、焼け跡から二人の男の焼死体が出ており、男たちは御庭番だという。火をつけた上に金を盗む賊徒たちを追って、逆に殺されたようだ。そして行方知れずの娘は、その現場を目撃したことで攫われたのかもしれないという。
町奉行所も火付盗賊改も御庭番を殺した賊徒の探索を優先しており、行方知れずの娘には関心がない。老中・青山の意を受けたおしんに口説かれ、小籐次は娘の救出に乗り出す。その結果、小籐次は〝陰の者〟たちと死闘を繰り広げることになった――。
新シリーズ書き下ろし、第7弾。 (「BOOK」データベースより)
新・酔いどれ小籐次シリーズの第七巻の痛快長編時代小説です。
師走のある日、瀬戸物町での出火跡から、喉を断ち切られた二人のお庭番の焼死体が見つかる。密偵おしんに連れられその焼け跡へと赴いた小籐次だったが、九十年前の八代将軍吉宗の時代に由来するといわれる現在のお庭番十九家の表面的な来歴しか教えてくれない。
おしんや中田新八が仕える老中青山忠裕にこの事件の詳しい話を聞いた小籐次は、この火事の後行方不明となっている一人の娘がいると聞き立ち上がるのだった。
本書のストーリーは単純です。
きっかけは一件の火事ですが、そこで一人の娘が行方不明になり、その娘を助けるために小籐次が活躍する、それだけです。ただ、この事件の背景に老中をも巻き込んだ隠された事情があったというのです。
映画やドラマ、それに小説も含め、面白い物語というものは、基本となる物語の流れは単純であって、その単純な物語にいかに肉付けがなされているかにかかわってくる気がします。
その言う意味では、本書は典型的な面白さを持った物語だといえます。単純に一人の娘を助けるそのことにひたすら突き進む小籐次の姿があり、そこに八代将軍吉宗由来のお庭番などの伝記小説的な色合いが付加されているのです。
まあ、もともとこのシリーズのファンである私の感想なので多分に割り引いてもらわないといけないかもしれませんが、面白い作品として仕上がっていると思います。