格闘小説なんですが、この作品のように真正面から格闘技と取り組んだ作品はそれまであまり無かったのではないでしょうか。
主人公は丹波文七という空手を初めとする種々の格闘技を学んだ若者で、それに対し、空手家松尾象山、プロレスのグレート巽など現実の格闘家を彷彿とさせる人物が配置されています。他にも柔術や古武術などの使い手も登場する格闘技の一大イベント小説となっています。
武道に対する作者の強い思い入れが感じられる作品です。
エロスは全くなく、純粋に「誰が強いのか」という現実の世界での問いかけを小説の中で表現しようとしているのでしょう。
今では無くなったK-1やプライドが一世を風靡しましたが、それらよりずっと前にこの小説は書かれています。プライド等の格闘技に興味のない人には面白くはない物語かもしれません。でも、少しでもそれらの格闘技を面白いと思った人にはたまらない作品だと思います。