木内 一裕

矢能シリーズ

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講談社

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ドッグレース』とは

 

本書『ドッグレース』は『矢能シリーズ』四冊目の作品で、文庫で320頁の長編のハードボイルド小説です。

主人公と栞という少女の存在が生きている、軽く読めて面白いエンターテイメント小説の王道的な作品です。

 

ドッグレース』の簡単なあらすじ

 

人気俳優とカリスマ歌姫が惨殺された。容疑が濃厚なドラッグ密売人が逮捕されるも冤罪を主張。弁護人から協力を請われた元ヤクザの探偵・矢能は裏社会のディープゾーンに踏み込み容疑を覆す鍵を握るアウトローの捜索に乗り出した。最高難度の人捜し、その行方は―。一気読み必至の「高回転」犯罪サスペンス!(「BOOK」データベースより)

 


 

ドラッグ売人の児嶋康介は人気俳優の松村保と歌姫の夏川サラを殺した容疑で逮捕された。その際に児島が連絡を取ってほしいと頼んだ相手は弁護士ではなく元ヤクザの探偵の矢能だった。

その矢能政男は児嶋の弁護士鳥飼美枝子から真犯人と目されるガスこと西崎貴洋の友人の河村隆史という男を探す仕事を依頼される。

鳥飼らのスポンサーだという六本木のドラッグ業界のキングからこの仕事の裏の事情を聴いてた矢能はこの仕事を請けることにする。

他方、矢能を知る警視庁捜査一課六係の係長中尾警部と砂川佑警部補のマル暴コンビは、東京地検の金山検事から、矢島を調べ偽装工作をするようであればそれを阻止するように命じられるのだった。

 

ドッグレース』の感想

 

本書『ドッグレース』をハードボイルド小説といっていいものかは疑問もありますが、まさに「エンターテインメントとしての」という修飾語付きのハードボイルド小説と言い切ってもいいと思われます。

本『矢能シリーズ』では、まずは第一巻目の『水の中の犬』で死んだ名無しの探偵の「私」に預けられた栞という名の女の子の存在が強烈です。

あらためて言うまでもなく、この栞は矢能を中心とした本書においての無垢な存在として、足は洗っていても変わらずに暴力的な雰囲気を持つ矢能の一片の良心であるのでしょう。

 

 

また良心と言えば、栞が慕う美容院のお姉さんに関しての話もまた、少々半端な印象はあるものの、ヤクザのバイオレンス物語の清涼剤として効いています。

この美容院のお姉さんは『水の中の犬』でも死んだ探偵の心のオアシスとして登場しています。

本『矢能シリーズ』も、ほかの面白いと言われるエンターテイメント小説と同様にキャラクター設定がかなり生きていると思われる作品であり、ことは本書『ドッグレース』でもそのままにあてはまります。

 

本書『ドッグレース』の物語自体は単純な人探しの物語であり、ハードボイルド小説の王道です。

つまり、主人公の矢能が元ヤクザという経歴を十分に生かせる仕事が舞い込む、という話であり、探偵としての矢能がその力を無理なく発揮できる舞台が設けられているのです。

というのも、矢能が依頼された人探しの対象となる河村という男は裏社会に潜む男であり、まさに元ヤクザの矢能のコネクションが生きる対象だったのです。

 

本書『ドッグレース』はまた、シリーズ全体が有しているバイオレンスの雰囲気に包まれた物語でもあります。

かしながら、どこかコミカルな面も持ち合わせているのであり、例えば平山夢明の『ダイナー』のようなバイオレンスそのものの塊のような作品とはまた異なります。

アウトローが主人公という点では馳星周の『不夜城』が挙げられるのかもしれませんが、本書『ドッグレース』はこの『不夜城』ほどダークではありませんし、シリアスでもありません。

 

 

本書『ドッグレース』は、まさにエンターテイメントに徹していて、栞の存在など、読者の読みやすさなどに配慮された作品だと言えます。

これからも楽しみなシリーズと言えます。

[投稿日]2019年10月24日  [最終更新日]2021年9月5日
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