木内 一裕

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講談社

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本書『嘘ですけど何か』は、女性編集者を主人公とする文庫本で336頁の長編ノンストップエンタテイメント小説です。

木内一裕という作家の特徴の一つであるコンパクトなストーリー展開が小気味いい作品でしたが、特別面白いとまでは言えない、普通の面白さの作品でした。

 

『嘘ですけど何か』の簡単なあらすじ 

 

水嶋亜希、三十二歳独身。文芸編集者としてトラブル処理に飛び回る日々。仕事を頑張ったご褒美のように、ある日高スペックのエリート官僚と偶然出会い恋が始まる予感が。だが新幹線爆破テロ事件が発生すると、明らかに彼の態度が怪しくなっていく―私、騙されてる?痛快でドラマティックな反撃が始まる!(「BOOK」データベースより)

 

雄辨社という出版社に勤務する編集者の水嶋亜希は、ある日外務省に勤務する二枚目と出会い、その日のうちに一夜を共にしてしまう。

外務省に勤務する待田隆介という名のその男とは連絡が取れないでいたが、テレビの新幹線の爆発事件のニュースをみると総理の横にいた。

食事に誘われて行った現在は内閣総理大臣秘書官補だという待田の家で、待田が誰かに殺人の電話をかけているのを聞いてしまう。

あわてて逃げ帰ってしまった亜紀だったが、翌朝、待田のスマホの画面で見た“西本さやか”という女が殺されたというニュースが飛び込んできた。

早速、警察署へ行き、西本さやか事件の犯人は内閣総理大臣秘書官補の待田隆介という男だと告げるが、現れた刑事は待田隆介は警視庁のキャリア官僚の警視正だと言い、逆に亜紀を偽計業務妨害の疑いで逮捕するというのだった。

 

『嘘ですけど何か』の感想

 

本書『嘘ですけど何か』もまたじつに木内一裕の作品らしい、コンパクトにまとまった、スピード感にあふれた作品でした。

本書の主人公水嶋亜希は自分は「平然とウソをつく」ことを認めており、その上で自分のウソは相手をつかの間幸せにし、そのウソがばれたことはないのだから「誠実な人間」だと思っています。

自分が担当する作家がゴネたり、理不尽な要求をしてきても、これを舌先三寸で丸め込んで望む結果へと導き、警察で尋問を受けても担当の刑事をやり込めるほど達者な口をしています。

 

本書『嘘ですけど何か』の前半は亜紀が逮捕されたり、新幹線爆破の様子があったり、西本さやかについて語られたりと、物語の前提が揃えられていく様子が描かれています。

この前半はまさに亜紀の口のうまさ、つまりはタイトルの『嘘ですけど何か』がそのままに生きる亜紀のウソが幅を利かせています。

 

しかし、本書『嘘ですけど何か』も後半になると亜紀の「ウソ」が出る場もあまり見られません。

まずは亜紀が担当していた作家の中学生の息子の桐山八郎兵衛が、さらに物語のキーマンでもある小田嶋環とその仲間、それに内閣情報調査室の槙野などが登場してきます。

そうして、物語は待田の叔父である柴田宗矩元刑事や内閣情報調査室などを巻き込んで展開することになります。

つまり、待田にとっては転落するジェットコースターに乗っているような、ノンストップの物語が描かれることになるのです。

 

本書『嘘ですけど何か』では、「ふざけるな!」という言葉で物語が始まる場面が多々あります。

特に第二章「脅かす女」では、全六項の話のうち第五項を除く四つの項で「ふざけるな!」という内心の言葉から始まっています。

こうした遊び心が一定の効果を持ってい入るのでしょうが、すべての項の始まりを「ふざけるな!」とい言葉で統一しているというわけではありません。

物語に一定のリズムや、ユーモラスな効果を与えている点は認めますが、何となく中途半端な印象もあります。

 

「もと」ではありますが女性弁護士が登場する物語と言えば、 柚月裕子の『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』という作品があります。

この作品はもと弁護士の上水流涼子とその助手貴山が、依頼者のために頭脳を絞り出して知的ゲームを楽しむ六編の短編からなるミステリー小説集です。

ノンストップサスペンス風のエンターテイメント作品である本書とはかなり内容が異なる作品です。

 

 

以上のように、本書『嘘ですけど何か』は場面展開も早く、テンポよく読み進めることができます。そして、面白い物語であることに間違いはありません。

ただ、今一つこの作者の『矢能シリーズ』のような読みごたえを感じなかったということです。

 

[投稿日]2020年12月20日  [最終更新日]2020年12月20日
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