本『陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 』は、『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の第一巻の、文庫本で解説まで入れて356頁の長編の痛快時代小説です。
今では『居眠り磐音シリーズ』として決定版も出ている人気シリーズを再読し始めました。やはり面白いシリーズです。
『陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 』の簡単なあらすじ
本書『陽炎ノ辻』についての旧版、新版二つの内容紹介文を載せておきます。下が「決定版」つまり新しい版であって、私の紹介文は旧版に基づくものです。
直心影流の達人、坂崎磐音。藩内騒動がもとで自藩を離れ、江戸深川六間堀で浪々の日々を送る。ある日、磐音はふとした縁で両替商の用心棒を引き受けるが、幕府の屋台骨を揺るがす大陰謀に巻き込まれてしまう。些事にこだわらず春風のように穏やかな磐音が颯爽と悪を斬る、著者渾身の痛快時代小説。(「BOOK」データベースより)
豊後関前藩の若き武士3人が帰藩したその日に、互いを斬り合う窮地に陥る。友を討った哀しみを胸に、坂崎磐音は江戸・深川の長屋で浪人暮らしを始める。大家の金兵衛に紹介された両替屋での用心棒稼業で、やがて幕府をもゆるがす大きな陰謀に巻き込まれ…。平成を代表する超人気時代小説の“決定版”が、ついに刊行開始!(決定版 「BOOK」データベースより)
坂崎磐根にとっては三年ぶりの故郷である豊後関前城下に、幼馴染の河出慎之輔と小林琴平と共に帰ってきた。
しかしそこで待っていたのは慎之輔の妻の舞が密通をしているという話であり、その行き違いにより琴平は慎之輔を斬り、その琴平を磐根が切り捨てることになってしまう。
国家老の正睦を父に持つ磐根は、許嫁である琴平の妹の奈緒を娶るわけにもいかず、関前にも居れなくなり、再び江戸へと出てくるのだった。
その年の十月の中旬、深川六間堀町の金兵衛長屋に住んでいた磐根は、金兵衛の娘のおこんが奉公している今津屋という両替商に用心棒として雇ってもらうことになった。
今津屋では十代将軍の徳川家治のもと、老中になった田沼意次の新貨幣政策の南鐐二朱銀の新発行に伴うとある企みに巻き込まれることになるのだった。
『陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 』の感想
本書『陽炎ノ辻 ─ 居眠り磐音江戸双紙 1 』は一大ベストセラーとなった『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の第一巻です。
本『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』は、十数年前からとおして一度読んだことがあるのですが、改めて最初から読み直してみようと思い立ちました。
本シリーズの最初の頃のまさに痛快小説と呼べる面白さがシリーズの途中から変化したように思え、その点を確かめたいと思ったのです。
でも、本シリーズが面白いので再読したかった、というのが一番大きな理由でしょう。
本書『陽炎ノ辻』の冒頭から、自分の許嫁の兄でもある親友と対決し、これを斬り捨てなければならないという主人公の坂崎磐根という存在が強烈に迫ってきます。
その後、郷里の豊後関前藩を離れ、江戸で浪人として暮らす磐根のその日暮らしの姿が描かれ、その落差がまずは印象に残ります。
その上で、どてらの金兵衛長屋に住まう磐根が今津屋とのつながりを持ち、品川柳次郎や竹村武左衛門という知己を得る様子が描かれます。
ここで、本シリーズの基本的な登場人物や環境が整えられるのです。
その上で磐根は時の老中の田沼意次がすすめる新貨幣政策にからんだ事件に巻き込まれていきます。
一介の浪人が江戸の町の豪商と知り合い、田村意次という歴史上高名な人物の政策に絡んだ働きを見せるという痛快小説としては王道の物語が展開されます。
あらためて読み直しても、作者の佐伯泰英の物語の進め方がうまいと思わざるを得ない運びであり、読者を飽きさせない流れになっていることが言えそうです。
だからこそ、この後全部で五十巻を越える一大ベストセラーシリーズとして人気を博することになったと言えるのでしょう。
その人気は、本書『陽炎ノ辻』を原作として山本耕史主演でテレビドラマ化され、さらには松坂桃李という人気スターを主人公とした映画も作られることになります。
また、かざま鋭二の作画でコミック化もされています。
ともあれ、一大人気シリーズの第一巻を読み直し始めました。さすがに再読してもその面白さは褪せません。
今後も随時読み進めたいと思っています。