池波 正太郎

イラスト1

剣客商売シリーズ(完了)

  1. 剣客商売
  2. 辻斬り
  3. 陽炎の男
  4. 天魔
  5. 白い鬼
  6. 新妻
  1. 隠れ蓑
  2. 狂乱
  3. 待ち伏せ
  4. 春の嵐(長編)
  5. 勝負
  6. 十番斬り
  1. 波紋
  2. 暗殺者(長編)
  3. 二十番斬り
  4. 浮沈(長編)

剣客商売シリーズ 番外編(完了)

  1. 黒白
  2. ないしょないしょ

あまりにも有名なシリーズです。この作者には他にも多くの作品群がありますが、中でも『鬼平犯科帳』シリーズや『仕掛人・藤枝梅安』シリーズといったベストセラーが有名です。

主人公は、無外流の達人の秋山小兵衛と言っていいと思います。また、小兵衛の妻おはるや、小兵衛の息子の大治郎、後に大治郎の嫁となる田沼意次の妾腹の娘の佐々木三冬、更に小兵衛の手足となって探索の手伝いをする、小兵衛の門人だった四谷伝馬町の御用聞き弥七とその手下である徳次郎らが主要な登場人物です。

同様な設定の物語として、鳥羽亮の『剣客春秋 』というシリーズがあります。千坂藤兵衛とその娘里美、そしてその婿の彦四郎、弥八、徳次郎といった下っぴきらが活躍する痛快時代小説です。今では新しいシリーズにもなっています。

全部読んでしまうほどに面白い小説ではありますが、改めて本シリーズを読むと、申し訳ないけれど本シリーズの魅力には及ばないようです。

この秋山小兵衛は、江戸の剣術の世界では知る人ぞ知ると言う剣客です。もうすぐ還暦という年齢でありますが、鐘ヶ淵の隠宅に小兵衛の身の回りの手伝いに来ていたおはるという娘に手をつけてしまい、後に結婚してしまうような人物です。

一口で言えば、小兵衛親子の話を中心とした人情味あふれる活劇小説ですが、池波正太郎という作家の手になるこの小説は、単なる活劇小説の域を越えた物語として読み手の心に迫ってきます。

小兵衛の若い頃から、今に至るまでの剣術修行の中で得た修行仲間や立ち合い相手などが入れ代わりながら物語の中に登場してきます。また、一子大治郎も幼いころから小兵衛の師である辻平右衛門のもとへと修行に出ており、今では小兵衛に並ぶほどの腕前になっているのです。

ただ、シリーズの始めでは、剣術修行のみに専念してきた大治郎はそれ以外のこと、例えば女性に関しては全くのうぶであり、どう対処してよいのか分からなかったりもします。そこらは三冬と結ばれていく過程の物語で詳しく語られていて、この物語のユーモラスな一面となっているのです。

また、大治郎について言うと、そうした朴念仁であった人柄が、次第に人間が練れてくる様も見どころです。ちょっとした居酒屋で酒をたしなむようにもなり、酸いも甘いも噛み分けるとまではいかないにしても、当初の姿からはかけ離れた人物として成長していく様子もまた見どころです。

 

しかし、何と言っても一番なのは秋山小兵衛の人間的な魅力です。三冬という息子の嫁を通して時の権力者田沼意次とも知己を得、その力を借りながら事件を解決していく様子は実に小気味いいのです。

その田沼意次にしても、巷間言われるような賄賂に染まった悪徳政治家ではなく、広い視野を持つ優秀な政治家として描いてあります。

弥七や徳次郎といった小兵衛の手足となって動く回る人物もまた魅力的です。コミカルな内容の短編から、侍の生きざまを重厚に描き出すも掌編など、バラエティに富んだ内容の物語です。

また、池波正太郎作品といえば料理関連の描写が有名ですが、本シリーズでも随所においしそうな料理の場面が出てきます。

 

また、このシリーズは何度も映像化されており、テレビドラマでは山形勲と加藤剛、中村又五郎と加藤剛、藤田まことと渡部篤郎・山口馬木也、北大路欣也と斎藤工のものと四パターンで制作されているようです。

ちなみに、DVDは五シーズンも放映されたという藤田まこと版しか見当たりませんでした。

ついでに言えば、本シリーズはコミック化もされていて、さいとう・たかをと大島やすいちの夫々の作品が出ています。

私は画が丁寧い描いてあり好みだった大島やすいち版を購入しつつあります。このコミック版は、だいたい文庫本の一巻分をコミック二巻で描いてあると思われます。

[投稿日]2015年04月01日  [最終更新日]2019年1月4日

おすすめの小説

老人が活躍する時代小説

はぐれ長屋の用心棒シリーズ ( 鳥羽 亮 )
主人公は剣の達人だが、隠居の身です。だから立ち回りも時間を経ると息切れしてしまいます。だから、同じ年寄りたちが助け合い、戦うのです。隠居とは言えまだ五十歳代の登場人物です。還暦を過ぎたわが身としては、少しの寂しさが・・・・。
三屋清左衛門残日録 ( 藤沢 周平 )
藤沢周平の代表作の一つなのですが、引退した海坂藩を思わせる、とある藩の元用人が藩の紛争に巻き込まれていく物語である本書は、定評のある情景描写と共に主人公の生き方が心を打ちます。
大江戸定年組シリーズ ( 風野 真知雄 )
同心上がり、旗本、商人という身分違いの幼馴染の隠居三人組を主人公とする人情時代劇です。この三人組は深川は大川近くに隠れ家を持ち、自分たちのこれからの人生を探求しようとする中、様々な頼まれごとを解決していくのです。
軍鶏侍シリーズ ( 野口 卓 )
デビュー作の軍鶏侍は、藤沢周平作品を思わせる作風で、非常に読みやすく、当初から高い評価を受けています。
酔いどれ小籐次シリーズ ( 佐伯泰英 )
風采の上がらない身の丈五尺一寸の五十男の、しかしながら来島水軍流遣い手である赤目小籐次が、旧主の恥をそそぐために、単身で大名四藩に喧嘩を売る、爽快感満載の痛快活劇時代小説です。

関連リンク

池波正太郎 『剣客商売一 剣客商売』 | 新潮社
今回はいよいよ江戸モノ、池波正太郎さんの『剣客商売』です。数冊齧っただけで言うのもアレですが、これを読んで、時代小説にハマる人が多いのも納得できました。憧れの世界に浸れる、ということですね。
剣客商売 - ほぼ日刊イトイ新聞
さて、どれを紹介したらいいのか、たいへん悩むところですが、まず「剣客商売」(新潮文庫)。これは絶対にはずせません。様々な年代・職業のレギュラーメンバーが活躍し、剣豪小説(?)でありながらホームドラマでもあり、また人情物ともいえる、とてもふくらみのある作品だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です