大沢 在昌

狩人シリーズ

イラスト1
Pocket

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 北の狩人(上・下) [ 大沢在昌 ] へ。


新宿に北の国から謎の男が現れる。獣のような野性的な肉体は、特別な訓練を積んだことを物語っていた。男は歌舞伎町で十年以上も前に潰れた暴力団のことを聞き回る。一体何を企んでいるというのか。不穏な気配を感じた新宿署の刑事・佐江は、その男をマークするのだが…。新宿にもう一人のヒーローを誕生させた会心のハードボイルド長編小説。(上巻)
ついに、北の国から来た男の正体と目的が分かった。その瞬間、新宿署の刑事だけでなく暴力団の幹部までもが息を呑んだ。「あの時の…」彼は十二年前に葬られた、ある出来事の関係者だったのだ。過去の秘密が次々に明かされていく。やがて彼は「獲物」を仕とめようと最後の賭けに出る。だがそこには予想だにしていない悲しい結末が待っていた。(下巻)(「BOOK」データベースより)

新宿署の刑事狩人シリーズの一作目です。

新宿にふらりと現れた一人の若者が、十年以上も前に潰れてしまった「田代組」という暴力団のことについてヤクザに声をかけて聞きまわっているのですから何事かと気になります。この若者を見ていた新宿署の刑事である佐江も同じ印象を持ったようで、田舎ものと目星を付けた女子高校生の杏とエリによって、その筋の経営する店へと送りこまれたこの若者を助け出します。

この梶雪人という若者は何故ヤクザに喧嘩を売るような行動をとっているのかと、冒頭から示される謎につい引き込まれてしまいました。また、この若者は田舎者であることを隠そうとはしないものの、鍛え上げられた肉体をもち、ヤクザ相手に全く物怖じしない態度であり、その純朴さも含め、まさに新しいヒーロー像と言って良いほどに実に魅力的に感じたのです。

そして、序盤でこの若者を引っかけた杏という娘のほのかな恋心など、物語としての見せ方が上手い、と感じ入ってしまいます。さすが大沢在昌なのです。

ところが、物語の序盤を過ぎ、少しずつ謎が明らかになってくるあたりから微妙に雰囲気が変わってきます。そして、文庫本の下巻に入るあたりには、普通のアクション小説へと変化していました。冒頭で見せた純朴な青年である梶雪人という青年のヒーロー性は消えて無くなっていました。

面白くないのではなく、新鮮さが無くなり、大沢在昌のいつもの面白さ満載のアクション小説になっていたのです。シリーズを通しての語り手である新宿署刑事の佐江、宮本、近松というヤクザ、それに新島という正体不明の男という登場人物は、いつもの大沢小説に登場する刑事であり、ヤクザであって、当初感じた新鮮な風は消え、大沢在昌らしいアクション小説になっていました。

本書の「あとがき」で、千街晶之氏が主人公の梶雪人について「純朴な梶は、巻頭の登場シーンこそ不穏な雰囲気を漂わせているものの、後半は何やら頼りなくも見えてくる。」と、同じようなことを書いておられました。「新宿鮫」を思わせるヒーロー像あったはずの存在が普通の青年に変わってしまったのです。

なお、本書は文庫上下巻合わせて689頁にもなるのですが、この上下巻を合わせて電子書籍化されています。

[投稿日]2017年01月12日  [最終更新日]2017年1月12日
Pocket

おすすめの小説

おすすめの警察小説

ハードボイルド色の濃い警察小説を集めてみました。。
マークスの山 ( 高村 薫 )
直木賞受賞作品。この本を含む「合田雄一郎刑事シリーズ」は骨太の警察小説です。
雪虫―刑事・鳴沢了 ( 堂場 瞬一 )
祖父も父親も警察官という血を引く新潟県警捜査一課の刑事鳴沢了を主人公の、ハードボイルド色が濃厚な骨太の警察小説。
犯人に告ぐ ( 雫井 脩介 )
とある誘拐事件が発生し、県警本部長の曾根は、かつて起きた誘拐事件で誘拐された子供が殺されてしまうミスを犯した巻島史彦特別捜査官をテレビに出演させる手段を思いつき、巻島に命じるのだった。
制服捜査 ( 佐々木 譲 )
札幌で刑事として長年勤務していた川久保篤巡査部長が、十勝の田舎の駐在さんになり、さまざまな事件を解決する、かなり読み応えのある小説です。
魔笛 ( 野沢尚 )
白昼の渋谷を襲った無差別爆弾テロ!爆風を背に立ち去ったのは、公安が過激な教団に送り込んでいた女だった。何が彼女を変えたのか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です