佐伯 泰英

居眠り磐音 スピンオフシリーズ

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本書『武士の賦 居眠り磐音』は、文庫本で330頁の『居眠り磐音スピンオフシリーズ』の第二弾の連作の時代小説です。

共に居眠り磐音シリーズの重要登場人物である重富利次郎と霧子との、幼いころから二人の出会い、成長を描く出すシリーズのファンならばたまらない面白さを持った作品です。

 

武士の賦 居眠り磐音』の簡単なあらすじ

 

土佐高知藩山内家の家臣の重富家に、次男・利次郎が生まれた。だが利次郎はやんちゃが過ぎて祖父の家に預けられることになる(「初恋の夏」)。一方、雑賀衆の姥捨の郷で育った霧子は、復讐の思いを秘めたまま、実の両親の仇である泰造に従っていた…(「霧子の仇」)。坂崎磐音の弟妹ともいうべき若者たちの青春の日々を描く連作集。 (「BOOK」データベースより)

 

第一話 初恋の夏
土佐高知藩山内家の江戸藩邸で生まれ、活発に過ぎるほどに育った重富利次郎の四歳の夏、藩邸奥庭で水遊びをしている最中に、殿様の山内土佐守豊敷に見つかってしまう。殿様は穏便にというものの、利次郎は、新庄家上屋敷内で暮らす母親の両親のもとで暮らすこととなった。

第二話 霧子の仇
高野山の麓にある雑賀衆の姥捨の里にいた霧子は、実の両親が雑賀衆流浪集団の泰造一味に殺されていたことを知り、里に帰ってきた泰造一味への復讐のために、共に里を出るのだった。一方、利次郎は佐々木玲圓道場への紹介状をもらい、住み込みでの入門を許されていた。

第三話 出会いのとき
姥捨ての里を出た泰造一味は、大納言家基の暗殺を試みるものの失敗し全滅していた。霧子は一人弥助に捕らえられ、なぜか家基一行に助けられ、佐々木玲圓坂崎磐根と共に玲圓道場へと連れてこられた。霧子は、ここで瘦せ軍鶏と呼ばれていた松平辰平や、でぶ軍鶏の重富利次郎らと出会うことになる。

第四話 平林寺代参
おこんと夫婦になることが決まり、また佐々木玲圓、おえい夫婦の養子となることを決心した坂崎磐根は、玲圓から禅刹平林寺への代参を頼まれた。おこんらと共に旅立った磐根たちは、日光の兼造一味を捕縛し、翌日、川越藩越前松平家の剣術指導をすることになった。

第五話 霧子への想い
磐根は川越藩国家老の石和田から、東軍流木俣軍兵衛敬重という人物が川越の夜の町を牛耳るようになり、役人も手が出せないでいるという話を聞き、これを解決してしまう。江戸へと戻った磐根は、思いつめた辰平から相談を受けることになる。また、利次郎は自分の霧子への想いに気付くのだった。

 

武士の賦 居眠り磐音』の感想

 

本書『武士の賦 居眠り磐音』は、連作という形をとってはいますが、実際は長編といってもいいと思われます。

居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の主要登場人物である重富利次郎と霧子の生い立ちや、二人が互いを意識するまでの歴史が描かれます。

これまで幾度か書いてきたように『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』が終わった今、このようなスピンオフシリーズが続くことはシリーズのファンとしては非常に喜ばしいことです。

特に、『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の続編的な位置にあった『空也十番勝負シリーズ』がなかなか進展しない中、本書『武士の賦 居眠り磐音』のような作品は待ち望んだところです。

ちなみに、『空也十番勝負シリーズ』に関しては、「『空也十番勝負 決定版』8月より連続刊行開始!」との記事がありました。

 

それはともかく、忍びの者としての力量も高い霧子の存在は、磐根の仲間のあいだでも特異な地位にあるといえます。

居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の情報収集担当として弥助と共に大活躍をしている登場人物なのです。

その霧子がでぶ軍鶏と呼ばれたこともある重富利次郎と所帯を持つことになったのはシリーズ本編でも語られていました。

しかし、二人の生い立ちなどは何もわかっていなかったところ、このスピンオフシリーズで明らかにされたのです。

そうした本書は『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』本編のファンならずとも面白く読める作品です。

 

ただ、本編で語られている点については本書『武士の賦 居眠り磐音』では殆ど触れられておらず、詳しいことが思い出せません。

本当のファンであれば全巻を手元において、疑問点はすぐに以前の著作を参照して調べることができるのでしょうが、残念ながら図書館を自分の書斎としている我が身ではそれもできません。

たとえば、日光で家基を襲った一味の一員であったにも拘らず何故霧子だけが命を助けられたのか、など本編ではどういういきさつであったのか、全く覚えていないのです。

もう一点、重富利次郎と松平辰平とが、でぶ軍鶏と瘦せ軍鶏として並び称されるようになっていく、その経緯が一言で済んでいますが、この点も本編では詳しく描いてあったものかもわからないのです。

 

こうして本書『武士の賦 居眠り磐音』などのスピンオフシリーズを読んでいるとやはり本編がとても懐かしくなってきます。

やはり、もう一度『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』を、今は決定版が出て『居眠り磐音シリーズ』と改名されていると思いますが、最初から読み直すしかないようです。

[投稿日]2021年05月30日  [最終更新日]2021年5月31日
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