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原 尞 雑感

日本でハードボイルド小説といえばこの作家、原尞を挙げないわけにはいかないでしょう。そのくらい正統派のハードボイルド作家として愛されてきた作家さんだと思うのですが、いかんせん寡作です。そのすべてが沢崎探偵の物語ですが、19年間で長編4作、短編1作、エッセイ集が一冊という出版数なのです。

この少ない出版数で第102回直木賞、ファルコン賞、第9回日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞を受賞し、第2回山本周五郎賞の候補に挙がっています。

どこか東直巳の畝原探偵を思い出しました。ただ、畝原探偵の方は家族を守ると言う意味も含めて生活臭が前面に出でいるのに比べ、沢崎探偵にはその匂いは全くありません。個人的には畝原探偵の方好みなのですが、正面からチャンドラーのような物語というと原尞作品になるでしょうか。

この作者はレイモンド・チャンドラーが好きなそうです。であればフィリップ・マーロウということになりそうなのだけれども、マーロウのような軽口は叩かないのです。まあ、そのような探偵であればフィリップ・マーロウものを読めばいいわけで、わざわざ原尞が同じような主人公を描く必要もないので、それは当り前なのでしょう。

蛇足ながら、原尞という人は元々フリーのジャズピアニストだそうです。この人のジャズを聴いてみたい気がします。

[投稿日] 2015年04月16日  [最終更新日] 2015年5月21日
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おすすめの小説

おすすめのハードボイルド作家(国内)

以下の各作品はハードボイルドという括りが無くても、お勧めの作品群です。
北方 謙三
現在の日本のハードボイルド作家の第一人者でしょう。「ブラディ・ドール シリーズ 」に代表される作品群は、何時までも色褪せません。
志水 辰夫
叙情性豊かと評される文章は、シミタツ節と呼ばれています。一時期はハードボイルドと言えば北方 謙三か志水辰夫かとも言われました。「飢えて狼」から始まる三部作は今でも是非一読の価値あります。近時は時代小説を書かれていますが、シミタツ節は健在です。
藤原 伊織
テロリストのパラソル」など、その文章は格調高く、この作家の作品はハードボイルドという絞りがなくても面白い作家の上位に来ると思います。
大藪 春彦
銃と車を取ったら、何も残らない、と言われるほど、メカにこだわった文章です。日本のハードボイルドは、この人の「野獣死すべし」から始まりました。
大沢 在昌
種々のジャンルを書き分ける多作の作家ではありますが、エンターテインメント小説の書き手として抜群の面白さを持つ、職人的な作家さんの一人であることは間違いありません。中でも「新宿鮫」はシリーズ化され、4作目「無間人形」では直木賞を受賞していますし、9作目「狼花」、10作目「絆回廊」では日本冒険小説協会大賞を受賞しています。