原 尞 雑感
日本でハードボイルド小説といえばこの作家、原尞を挙げないわけにはいかないでしょう。そのくらい正統派のハードボイルド作家として愛されてきた作家さんだと思うのですが、いかんせん寡作です。そのすべてが沢崎探偵の物語ですが、19年間で長編4作、短編1作、エッセイ集が一冊という出版数なのです。
この少ない出版数で第102回直木賞、ファルコン賞、第9回日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞を受賞し、第2回山本周五郎賞の候補に挙がっています。
どこか東直巳の畝原探偵を思い出しました。ただ、畝原探偵の方は家族を守ると言う意味も含めて生活臭が前面に出でいるのに比べ、沢崎探偵にはその匂いは全くありません。個人的には畝原探偵の方好みなのですが、正面からチャンドラーのような物語というと原尞作品になるでしょうか。
この作者はレイモンド・チャンドラーが好きなそうです。であればフィリップ・マーロウということになりそうなのだけれども、マーロウのような軽口は叩かないのです。まあ、そのような探偵であればフィリップ・マーロウものを読めばいいわけで、わざわざ原尞が同じような主人公を描く必要もないので、それは当り前なのでしょう。
蛇足ながら、原尞という人は元々フリーのジャズピアニストだそうです。この人のジャズを聴いてみたい気がします。
[投稿日] 2015年04月16日 [最終更新日] 2015年5月21日