ススキノ探偵や私立探偵畝原とは全く異なるピカレスクロマンと言って良いのでしょうか、若き日の高倉健の演じる人物のようにストイックな印象の、凄腕の殺し屋の物語です。
主人公の榊原は一旦は暴力の世界からは足を洗い山奥で生活していたのですが、昔の兄貴分が助っ人を頼みに来たことから物語は動き始めます。
かつての恋人の身の安全を取引の材料にしただけで、この兄貴分を殺し、更に恋人の情報を知っているだろう昔の仲間を殺しに札幌の街に現れます。読み手には物語の背景情報は全く与えられず、話が進むにつれ少しずつ明かされるのです。
シリーズ第一作『フリージア』は以上のように幕が開きます。
二作目『残光』、三作目『疾走』はその恋人の息子恵太の危機をめぐる物語で、『ススキノ探偵シリーズ』の「俺」や、『探偵・畝原シリーズ』の探偵・畝原が登場したりと、東ワールドが展開されます。
面白い物語は登場人物のキャラクタ設定がよくできていると改めて感じさせられました。
文句なく面白いです。
映像作品としては、三浦友一主演で1998年に映画化されているのですが、DVD化はされていないようです。