佐伯 泰英

空也十番勝負シリーズ

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風に訊け 空也十番勝負(七)』とは

 

本書『風に訊け 空也十番勝負(七)』は『空也十番勝負シリーズ』の第七弾で、2022年5月に345頁の文庫本書き下ろしとして出版された、長編の痛快時代小説です。

何となくどこかで読んだような場面が続いた前巻『異変ありや 空也十番勝負(六)』と異なり、本書は痛快時代小説の定番ともいえるお家騒動ものと言えるそれなりにまとまった読みやすい作品でした。

 

風に訊け 空也十番勝負(七)』の簡単なあらすじ

 

七番勝負は新たな武者修行者の登場で幕を開ける。
老爺、愛鷹とともに旅を続けるひとりの武芸者。
安芸広島藩の重臣の息子で、間宮一刀流の達人でもあるその男は、江戸を訪れた折に、自ら同様に命を賭して武者修行の旅を続ける空也の存在を知る。
己と空也はいつの日か相まみえると確信し、旅を続けるが……。

一方、異国での戦いを終えた空也は、船に乗りこみ、数年にわたった修行の地である西国をはなれる。下船したのは長州萩。ここが新たな修行の地となった。
稽古の場を求め、萩の道場を訪れた空也は、ひょんなことから藩主派、家老派による萩藩の対立に巻き込まれるが、家老派と自らの因縁を知り、藩主派に力を貸すことに。
金も力もない藩主派の同年代の仲間たちと共に家老派を倒すための策略を巡らせる空也たちは目的を達することができるのか?

十六歳から四年を過ごした西国をついに離れ、新たな武者修行者が登場するなど、空也の新たな冒険が始まり、驚きに満ちた七番勝負の行方はーー。(内容紹介(出版社より))

 

風に訊け 空也十番勝負(七)』の感想

 

先にも書いた通り、本書『風に訊け 空也十番勝負(七)』は、典型的な痛快時代小説というべき、長州藩の政争に巻き込まれた主人公の活躍を描く作品です。

これまでは薩摩の追撃を受けていた坂崎空也ですが、本書ではその流れも一応の区切りを見たのでしょうか、薩摩の襲撃は見られません。

代わりに本書での空也は、通常ではない剣の技量を身につけた修行者として長州萩藩の政争に巻き込まれる、というよりも自分から乗り込みこれを解決しているようにも思えます。

 

空也は長崎を後にしてのち、長州は萩の地に降り立ちます。

そもそもここ長州へとやってきたのは、『未だ行ならず 空也十番勝負(五)』で登場してきた長州藩士篠山小太郎こと菊地成宗のことがあったからでした。

空也自身が、一年前に海賊船フロイス号による三度目の長崎会所の交易船襲撃の折にイスパニア人の剣術家カルバリョと立ち会いこれを倒した際、菊地成宗は高木麻衣の堺筒で撃たれ身罷ったのです。

 

萩の地では、空也は宍野六乃丞と名乗りながら藩の剣術指南役であった平櫛兵衛助の営む平櫛道場を訪れます。

そこで知り合った藩士の峰村正巳に萩城下を案内してもらいながら、藩主を中心とする藩政を確立しようとする当役派と呼ばれる藩主派と、毛利佐久兵衛という国家老の一人を中心とした一派即ち当職派とが対立している藩内の事情について教えてもらいます。

当の峰村は何とか若き藩主を盛り立てたいと考えているようですが、藩校の明倫館を訪れた際に、藩主の毛利大膳大夫斉房と会うことになります。

ただ、当時の藩士が身分もよく分からない武者修行と称する浪人に藩内を案内する設定には無理がありはしないかとも思いましたが、痛快小説でそこまで文句を言う必要もないのでしょう。

そののち、空也と峰村は当職派の隠れ家を見張り、毛利佐久兵衛や当職派の腕利きである表組頭の難波久五郎、それに札座用達を務める御用商人浜中屋七左衛門、用心棒の長とみられる東郷四方之助という人物が集まるのを確認するのです。

こうして、長州藩内の抗争にかかわることになる空也です。

 

一方、江戸では神保小路にある尚武館道場では、空也の父である坂崎磐根、母おこん、それに妹の睦月や空也の想い人である渋谷眉月を始めとする空也の身を心配する面々が集まり、空也や高木麻衣らからの文を開く様子が描かれています。

空也の物語である本『空也十番勝負シリーズ』で描かれる江戸の様子は、空也の身を案じる家族や仲間の様子が描かれているばかりですが、本書『風に訊け 空也十番勝負(七)』では空也の武者修行の旅も終わりが近いことが示唆されます。

その後の磐根と空也の物語はどのように展開するものか、私の知る限りは未だ情報はないようですが、空也親子の活躍が続くことを願いたいものです。

 

ちなみに、長州藩萩藩という呼称が出てきたので調べると、萩藩とは長州藩の異名だとありました( ウィキペディア : 参照 )。

[投稿日]2022年08月12日  [最終更新日]2022年8月12日
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