『付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女』とは
本書『付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女』は『付添い屋・六平太シリーズ』の第5弾で、2015年7月に小学館から304頁の文庫本書き下ろしで刊行された連作短編の痛快時代小説集です。
『付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女』の簡単なあらすじ
付添い屋を稼業とする秋月六平太は、遠路鎌倉までの仕事を頼まれた。行き先は、駆込み寺として知られる東慶寺。味噌問屋「森嘉屋」のお内儀お栄は、夫の仕打ちに耐えかねて、離縁を決意したという。一方、六平太のかつての主家である信州十河藩加藤家は危急存亡の秋を迎えていた。財政難のところに、ご公儀から徳川家所縁の寺の改修を申しつけられたのだ。難局を乗り切るには、千両以上借金をしている材木商「飛騨屋」の力にすがるしかない。飛騨屋の妻女と昵懇の仲である六平太に、旧友から呼び出しがかかる。日本一の王道人情時代劇、円熟のシリーズ第五弾!書き下ろし長編時代小説。(「BOOK」データベースより)
第一話 厄介者
六平太と相惚れの仲である、音羽の廻り髪結い・おりきが何者かに襲われた。六平太は、おりきの付添いを始めるが、おりき自身から「客にからかわれるからやめてくれ」と言われてしまった。おりきの身の危険は去っていなかった。
第二話 十三夜
馴染み客である飛騨屋の親子から、六平太は老夫婦の江戸見物の付添い屋・を頼まれる。しかし、妻のおもとのほうは、少し物忘れがひどくなっているようだ。江戸見物に出かけても、おかしなところへ行こうとするのだ。
第三話
六平太は、商家のお内儀を鎌倉まで送るという付添いを頼まれる。行き先は、駆け込み寺として知られる東慶寺。味噌問屋のお内儀であるお栄は、義父母、夫の仕打ちに耐えかねて、家を出たのだという。
第四話 初時雨
江戸の老舗菓子屋をあの手この手で乗っ取ってきた『甘栄堂』は、悪事を知られている六平太をなんとか取り込もうとしている。ある日、秋月家に届いた『甘栄堂』からの付け届けの菓子を、妹の佐和は無断でお裾分けに持ちだしてしまう。(「内容紹介」より)
『付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女』の感想
本書『付添い屋・六平太 玄武の巻 駆込み女』は、『付添い屋・六平太シリーズ』の第5弾となる連作短編の痛快時代小説集です。
結局、本書は前作のシリーズ第四弾『鷺の巻 箱入り娘』を読んでから一年も経ってから読みました。あまりにきちんとし過ぎた物語で話の広がりを感じなくなったからです。
ところが何のきっかけで久しぶりに読んでみたところ、思いのほかにのめりこんでしまいました。
出版年月を見るとその間は四月ほどしかなく、特別間隔が開いて作者の技量が伸びたというわけでもなさそうです。
それは「十三夜」で語られる老夫婦の話が身につまされたからかもしれませんし、六平太の顧客の一人である材木商「飛騨屋」に十河藩が絡んできたりと、物語としての展開の可能性を感じたからかもしれません。
しかしながら、人物の心理描写がより細かになった印象を受けたりしているところを見ると、読み手である私が変わった可能性が高いと思われます。
いずれにしても、面白いと思った小説であることには間違いなく、次巻『朱雀の巻 恋娘』も読むことにしました。