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宇江佐 真理 雑感

時代小説作家の中でも「人情もの」に分類される作家は多々おられます。
そのなかでも宇江佐真理作品はお勧めです。

宇江佐真理作品では私はどちらかと言えば武家ものではなく、市井の人々を描いた作品が好きです。主人公を軽妙に動かし、読み手の心をつかむ文章は絶妙です。

この作家は函館在住の人らしいのですが、江戸の町、中でも深川についての描写は見てきたように描かれています。その舞台を背景にいつもの一日が始まり、それでも個々の人にとっては大事な出来事が起きて、そこに生活をする人々の思惑や情がからんでくる。そこを取り上げて極上の物語として私達の目の前に見せてくれるのです。

読み終えたあとの余韻がとても心地よく、ゆったりとその感動に浸るひと時があります。

特に「髪結い伊三次捕物余話シリーズ」がいい。

2015年11月11日のこと、突然、宇江佐真理氏が亡くなられたという記事が飛び込んできました。2015年11月7日に、乳癌のため函館市の病院で死去されたそうです。文藝春秋に闘病記「私の乳癌リポート」を書かれていたことも全く知りませんでした。
残念という言葉しかありません。合掌。

[投稿日] 2015年04月06日  [最終更新日] 2016年1月7日

おすすめの小説

おすすめの人情小説作家

山本 周五郎藤沢 周平といった大家は除いています。
梶 よう子
「時代小説にも草食系男子」との言葉のとおり、「柿のへた 御薬園同心柿のへた 御薬園同心」も、第15回松本清張賞を受賞した「一朝の夢」も、心優しい侍を主人公としており、読後が心地よい作品です。
今井 絵美子
鷺の墓」や「立場茶屋おりきシリーズ」といった、初期の作品がお勧めです。近年の作品は読み手を選ぶような気がします。
高田 郁
高田郁という人も作品毎に異なる世界を見せてくれる作家さんです。「みをつくし料理帖シリーズ」は料理人の娘を通して人情話の世界を繰り広げてくれますし、「あい」では心温まる夫婦の愛の物語を見せてくれます。
山本 一力
あかね空」で直木賞を取られましたが、その他の作品も「夢曳き船」のような'漢(おとこ)'を前面に出している作品もあれば、「ほうき星」のような'娘'を主人公にした作品もあります。
半村 良
人情話の紹介では必ず紹介する作家さんです。時代小説ではありませんが、「雨やどり」をはじめとするこの人の人情話はぜひ読んでもらいたいのです。