山本 一力 雑感
山本一力の作品に最初に出会ったのは「あかね空」でした。直木賞を受賞し、映画化もされるということで読んでみたのですが、人物が丁寧に書き込まれていて面白く、すぐに当時出ていた全部の作品を読んだ記憶があります。
特定の職業を主題として、その職業に就いている主人公を造形していく、という手法が新鮮で面白く感じたものです。
ただ、宇江佐真理の作品と比べ今ひとつ情感に欠ける感じはしました。この人の作品は作品で人情豊かに描きこまれていると思うのですが、宇江佐真理作品のような細やかさがないのかなという思いです。例えば今井恵美子作品を詩情豊かと表現することはあっても、山本一力作品を詩情豊かとはいえないと思うのです。しかし、それは欠点ということではなく、この作者の骨太な持ち味であり、特色なのです。それはまた山本一力作品の魅力として、読んでいて気持ちよく感じました。
宇江佐真理や今井恵美子の作品のような、優しさの中の人情物語を求めている方には色合いが異なるかもしれませんが、それでも自信を持って面白いとお勧めできると思います。
例によってこの人の作品も数が多く、またどれと絞ることが難しい作家の一人です。近時読んだ作品の中から強いて選んだ代表的なものと思ってください。
ソーシャルサービス Slownet(スローネット)では山本一力著の時代小説「大川わたり」が無料で読めるそうです。
[投稿日] 2015年04月21日 [最終更新日] 2016年1月13日