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大藪 春彦 雑感

日本のハードボイルドの草分けと言っても良い存在でしょう。

とにかく銃と車の書き込みは偏執的で、そのの書き込みは実に緻密になされています。大藪作品は「銃と車をとったら何も残らない」と言われたのももっともだと思わされます。

私が大藪作品を読みあさった頃から30年近くも経ちます。それでも、その作品のバイオレンス性が強烈であり、また車の運転もまったく知らないのに作品に描かれた車の運転シーンに引き込まれた記憶があるのです。

特に、「野獣死すべし」で、昼間は平凡な青年が夜は鍛え上げられた肉体を持つ非情な男に変身する様は小気味よいものでした。

そのうちに松田勇作や草刈正夫主演で「野獣死すべし」などの作品が映画化され、役者は良いけど全体のイメージはちょっと違うなどと勝手に思っていたものです。

人間をその内面まで書き込む、といったタイプが好きな方には向かないでしょう。特に、私のように雑読派の方は別として、志水辰夫のような叙情性豊かな文体が好みの方には大藪春彦の文体は乾いており、好みには合わないかもしれません。

[投稿日] 2015年04月07日  [最終更新日] 2015年7月6日
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おすすめの小説

おすすめのハードボイルド作家(日本)

以下の各作品はハードボイルドという括りが無くても、お勧めの作品群です。
北方 謙三
私は北方謙三の原点は「ブラディ・ドール」にこそあると思っています。"男"を体現しているこのシリーズこそまずは読むべき本です。
志水 辰夫
一時期はハードボイルドと言えば北方 謙三か志水辰夫かとも言われました。「「飢えて狼」から始まる三部作は今でも色褪せません。
藤原 伊織
テロリストのパラソル」など、その文章は格調高く、この作家の作品はハードボイルドという絞りがなくても面白い作家の上位に来ると思います。
逢坂 剛
著者本人が「カディスの赤い星」はチャンドラーへのオマージュ、と語っているように、主人公の日本人らしからぬ軽妙さは是非一読して体感してほしいものです。
東 直己
ススキノ探偵シリーズ」では、札幌はススキノを舞台に饒舌な「俺」が活躍します。
大沢 在昌
新宿鮫」では、キャリアの刑事が活躍します。エンタテイメントという言葉はこの人のためにあるのかもしれません。
三好 徹
天使シリーズ」は、短編の積み重ねですが、30年も前に読んだので今の時代に合うか、若干心配です。
平井 和正
ウルフガイシリーズ」は40年近くも間に読んだ本だけど、色褪せてない、と思います。

おすすめのハードボイルド作家(海外)

他にも多数の作家がいるのですが、とりあえず私が読み、印象の強かった作家だけを挙げています。また、挙げている作品はあくまで参考です。
ダシール・ハメット
サム・スペードが活躍する「マルタの鷹」から始まるシリーズは、ハードボイルドの名作中の名作です。あくまで客観的に、ときには暴力的なその文体は、この後に続く多くの作家に影響を与えました。この人を抜きにしてはハードボイルドは語れません。
レイモンド・チャンドラー
ハメットと同じく客観的描写に勤めるその文体はハードボイルドの古典です。「ロング・グッドバイ」では主人公のフィリップ・マーロウが行動し、事件の裏を探り出します。
ロバート・B・パーカー
饒舌な私立探偵スペンサーとそれを助ける黒人の大男ホークが様々な問題を時には暴力をも使って解決します。男の「誇り」を生き方で示すスペンサー、その矜持を認めつつ自らも自立する恋人のスーザン。この二人の会話もまた魅力的です。このシリーズの中でも「初秋」は少年とスペンサーの心の交流を描き必読です。
ジェイムズ・クラムリー
酔いどれの誇り」や「ダンシング・ベア」など、翻訳の妙なのかもしれませんが、その文章は文学作品のようです。
ローレンス・ブロック
八百万の死にざま」に代表されるマット・スカダー・シリーズでは、酔いどれ探偵が活躍します。

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