本書『野獣死すべし』は、文庫本で363頁の長編のハードボイルド小説です。
大藪ハードボイルド小説の原点ともいうべき作品で、映画化もされている名作です。
主人公の伊達邦彦は普段は優秀な学生であるが、本来の顔は射撃、各種スポーツに長けた孤高の狼であった。その彼が、鍛え上げた体や拳銃の腕を生かし、暴力団を相手に売上金を奪ったり、元気輸送車を襲ったりと犯罪を重ねていき、完全犯罪をたくらむ。
とにかく、主人公の行動が終始客観的に描かれていた様に記憶します。
この作品で作家デビューということなのですが、既に銃と車、それに暴力の描写は凄まじく、それまで食わず嫌いだった私が一気に引き込まれてしまいました。
小説としての完成度が高いのか低いのか、そうしたことは私にはわかりませんが、それまでの小説とは全く違うそのタッチに引き込まれたものです。
好みは別として、松田勇作主演の映画は結構ヒットしました。
私は未読ですが、この作のあと「復習編」「渡米編」と続き、シリーズ化されているようです。また、出版社も変動があり、光文社文庫から「伊達邦彦全集」が出版されており、上記のリンクは光文社版を取り上げました。