逢坂 剛

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文庫

講談社

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普通の人が普通の生活を送って行く中で非日常の世界に巻き込まれ、テロリストや警察など暴力のプロともいえる人間たちに対して敢然と立ち向かっていく、その姿が軽妙な会話にのって綴られていきます。

小さなPR会社を営む漆田亮(うるしだりょう)は、最大の得意先である日野楽器の河出広報担当常務から、スペインから来日するホセ・ラモス・バルデスの依頼を受けるように頼まれる。二十年前にホセの工房にやってきた日本人ギタリストを探してほしいというのだ。その後、ラモスと共に来日したラモスの孫娘フローラの日本で引き起こした問題もあって、漆田はギタリストを探してマドリードへと旅立つことになるのだった。

どちらかと言えば藤原伊織の作品に近く、特別なヒーローではない、普通の人間が非日常の世界へ巻き込まれていく様が描かれています。舞台は本書が刊行されたのがもう三十年近くも前(1986年)ですので、若干古いと言えばそうなのかもしれません。しかし、内容は全くそのような時代の隔たりは感じませんでした。ただただ、良く書き込まれた良質の冒険小説として、心地よい時間を過ごせたと感じるのみです。

本書については、逢坂氏本人が対談の中で「『カディスの赤い星』などはチャンドラーへのオマージュです。」と書いておられます。また、「主人公が一匹狼で気の利いた台詞が出てくるような小説は、あの頃の日本には少なかった」とも語っておられ、本書での日本人らしからぬ会話の面白さが納得できました。本書の特徴と言えば、この主人公の軽妙な会話にあると言っても過言ではないでしょう。加えて、フランコ政権下のスペインという、当時の時代を反映している舞台設定も興味深いものです。

全体として読み応えのある小説でしたが、個人的には終盤の意外性は無くてもよかったのかな、とも思いました。勿論、どんでん返しの妙という面白さも十分に分かるのですが、物語としてあの結末は好みで無いのです。蛇足でした。

ともあれ、面白い小説であることに間違いはありません。

[投稿日]2015年04月07日  [最終更新日]2015年4月7日
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