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R・チャンドラー 雑感

「いまさらチャンドラー、と言われるかも知れない。だけど一度はチャンドラー、なのである。」と「初心者のためのレイモンド・チャンドラー入門」というサイトに加藤篁さんという方が書かれていました。

そうなのです。ハードボイルドに魅せられたと言う以上はレイモンド・チャンドラーを見逃すわけにはいかないでしょう。あくまで客観的に描写すると言うその文体のみならず、その上手(うま)さに思わずうなってしまう小粋な会話の世界を堪能すべきです。

とはいえ、違和感を感じたのも事実です。確かに会話は小気味よく心の隅っこをくすぐられるような感じはするのですが、物語としてついていけない点もまたあるのです。背景となる社会の差なのか分かりませんが、この作家は絶対に面白いですからお読みなさい、とまでは言えません。多分、人を選ぶと思います。じっくりと読み込み、場面を楽しむ、そういう読み方の出来る人でないと面白いと感じないのではないでしょうか。

そういう意味も含めて、若干の違和感を感じている私も、近年村上春樹氏による新訳が出版されていることに触発され、再度読み直してみました。

なお、上記にはチャンドラーの長編作品しか書いていませんが、他に短編作品もあり、脚本も書いています。

[投稿日] 2015年04月28日  [最終更新日] 2015年5月18日

おすすめの小説

おすすめのハードボイルド作家(海外)

他にも多数の作家がいるのですが、とりあえず私が読み、印象の強かった作家だけを挙げています。また、挙げている作品はあくまで参考です。
ダシール ハメット
サム・スペードが活躍する「マルタの鷹」から始まるシリーズは、ハードボイルドの名作中の名作です。あくまで客観的に、ときには暴力的なその文体は、この後に続く多くの作家に影響を与えました。この人を抜きにしてはハードボイルドは語れません。
ロバート・B・パーカー
饒舌な私立探偵スペンサーとそれを助ける黒人の大男ホークが様々な問題を時には暴力をも使って解決します。男の「誇り」を生き方で示すスペンサー、その矜持を認めつつ自らも自立する恋人のスーザン。この二人の会話もまた魅力的です。このシリーズの中でも「初秋」は少年とスペンサーの心の交流を描き必読です。
ジェイムズ・クラムリー
酔いどれの誇り」や「ダンシング・ベア」など、翻訳の妙なのかもしれませんが、その文章は文学作品のようです。
ローレンス・ブロック
八百万の死にざま」に代表されるマット・スカダー・シリーズでは、酔いどれ探偵が活躍します。