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D・ハメット 雑感

ハードボイルドの第一人者といえばこの人を外せません。ハードボイルドという文体を確立した代表的な人で、同時代のレイモンド・チャンドラーとこの人は後に続く作家に多大な影響を与えました。

チャンドラーはハメットの影響をうけているらしいのですが、何故か日本ではチャンドラーの人気の方が高いようです。ハメットもチャンドラーも客観的描写を徹底した簡潔な文章で当事者の行動を語っているのですが、ハメットの方が客観性が徹底しており、更に暴力的だと感じます。それに比べチャンドラーは比較的叙情性が高いように思え、その点が日本人に好まれるのでしょうか。ハメットの作品も読んだのはかなり前ですが、「マルタの鷹」を最近読みなおしてみてそのように感じました。

ハードボイルド小説は、その文体、文章そのものがかなり大切なようです。だからこそ、他の小説にも増して翻訳が重要になってくるのではないでしょうか。

ハメットの造りだした探偵といえばサム・スペードですが、同様にバイオレンス小説として名高い「血の収穫」で初めて登場した名無しの探偵のコンチネンタル・オプも忘れてはいけません。

どちらにしてもハードボイルドの大家として読んでみて損は無い作家です。勿論、時代背景は古いですが、そのテンポの良さは変わりません。ただ、物語に情感を求める方には向かないと思います。

[投稿日] 2015年04月29日  [最終更新日] 2016年12月13日

おすすめの小説

おすすめのハードボイルド作家(海外)

他にも多数の作家がいるのですが、とりあえず私が読み、印象の強かった作家だけを挙げています。また、挙げている作品はあくまで参考です。
レイモンド・チャンドラー
ハメットと同じく客観的描写に勤めるその文体はハードボイルドの古典です。「ロング・グッドバイ」では、主人公のフィリップ・マーロウの活躍が、事件の裏を探り出します。
ロバート・B・パーカー
饒舌な私立探偵スペンサーとそれを助ける黒人の大男ホークが様々な問題を時には暴力をも使って解決します。男の「誇り」を生き方で示すスペンサー、その矜持を認めつつ自らも自立する恋人のスーザン。この二人の会話もまた魅力的です。このシリーズの中でも「初秋」は少年とスペンサーの心の交流を描き必読です。
ジェイムズ・クラムリー
酔いどれの誇り」や「ダンシング・ベア」など、翻訳の妙なのかもしれませんが、その文章は文学作品のようです。
ローレンス・ブロック
八百万の死にざま」に代表されるマット・スカダー・シリーズでは、酔いどれ探偵が活躍します。2015年には、シリーズ第10作の「獣たちの墓」が、リーアム・ニーソン主演で『誘拐の掟』というタイトルで映画化されました。