葉室 麟

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長州藩士・高杉晋作。本名・春風。攘夷か開国か。国論二分する幕末に、上海に渡った晋作は、欧米列強に蹂躙される民衆の姿を目の当りにし、「革命」に思い至る。激しい気性ゆえに脱藩、蟄居、閉門を繰返しながらも常に最前線で藩の窮地を救ってきた男は、日本の未来を見据え遂に幕府に挑む。己を信じ激動の時代を駆け抜けた二十八年の濃密な生涯を壮大なスケールで描く本格歴史小説。(「BOOK」データベースより)

 

その高名については改めて言うまでもない高杉晋作の生涯を描いた長編の時代小説です。

 

結論から言うと、個人的には今一つの印象でした。特に中国行きの場面はコミックの「おゝい竜馬」を思い出してしまいました。もしかしたら、この本全体の印象も、このコミックの印象に引きずられたのかもしれません。

 

 

そうした不満はありながらも、特に後半の晋作が歴史の表舞台に飛び出してからの展開などはかなり面白く、引き込まれました。

私が知らないだけかもしれませんが、薩長同盟の最初の提唱者が月形洗蔵という人物であることなど、この手の歴史小説では初めて明記してあったのではないでしょうか。この月形洗蔵については別に「月神」という作品で詳細に描写してあります。

 

 

これは葉室麟という作家に限らずの話ですが、どうも私は、歴史小説での詳細過ぎる歴史的事実の摘示は逆に物語としての興を殺ぐと感じてしまうようです。

例えば、同じく葉室麟の、武士として生きるということ、人を想うということの意味を突き詰めた作品である『いのちなりけり』という作品でもやはり情報量が多すぎすると感じたように、私は作者の自由な発想をこそ好むようです。

 

 

ですから、本書『春風伝』にしても、『いのちなりけり』にしても、歴史が好きで詳細な事実までをも知りたい人などにはかなり面白いと思える小説ではないでしょうか。

葉室麟の今後の歴史小説にも期待してみたいものです。

[投稿日]2015年03月25日  [最終更新日]2019年10月7日
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