『光る海 新・酔いどれ小籐次(二十二)』とは
本書『光る海 新・酔いどれ小籐次(二十二)』は『新・酔いどれ小籐次シリーズ』の第二十二弾で、2022年2月に345頁の文庫本として刊行された長編の痛快時代小説です。
『光る海 新・酔いどれ小籐次(二十二)』の簡単なあらすじ
森藩藩主の命により、参勤交代に先行して国許の豊後国を訪れることになった小籐次。降って湧いた千両の使い道に頭を悩ませながらも、元服して「平次」の名を得た息子・駿太郎、妻・おりょうとともに江戸を留守にする。三河国で子次郎・薫子姫との再会を喜ぶ一家だったが、姫の身にまたしても危険が迫っていることを知り…。(「BOOK」データベースより)
第一章 月代平次
文政十年(1827)春、南町奉行筒井政憲は小籐次と元服をして平次となった駿太郎への礼のために久慈屋を訪れた。その翌日、駿太郎は、北町奉行与力の岩代壮吾から、札差から大金を搾り取る蔵宿師が出現しており小籐次の力を借りたいと伝言を頼まれた。
第二章 蔵宿師民部
小籐次は中田新八とおしんから、蔵宿師の菅原民部が老中青山忠裕に棄捐令を出すようにと言ってきたことを聞いた。菅原民部は、元御側衆陣内甲斐守道綱と同じ遊び仲間の伊勢屋次郎兵衛という札差と組んで互いの利を図っていたのだった。
第三章 漁師見習い
三河国にいる子次郎は三枝家所領に近い小さな漁村の網元である卯右衛門に自分の正体を明かして頼み、漁の手伝いをさせてもらうことになった。その子次郎を待っていたのは小籐次たちが薫子姫のもとを訪ねてくるとの手紙だった。
第四章 子次郎の思案
子次郎とお比呂は小籐次たちの泊まる部屋に苦慮していたが、子次郎は庭の楠木に、卯右衛門の四男の波平とその朋輩の与助の手を借りて小屋を作り上げてしまう。一方、江戸では年少組の八人が望外山荘に寝泊まりし、剣術の稽古をするのだった。
第五章 薫子との再会
老中青山忠裕の道中手形を持った小籐次一行は、三河の三枝家へとやってきて、薫子を始め、お比呂そして子次郎や波平、与助らの出迎えを受けていた。早速木の上の小屋に登り三河の内海を眺めた駿太郎はその美しさに感動を覚えるのだった。
『光る海 新・酔いどれ小籐次(二十二)』の感想
本書『光る海 新・酔いどれ小籐次(二十二)』での小籐次たちは、豊後森藩第八代目藩主の来島通嘉から命じられた参勤下番へ同道するように命じられた旅と、大身旗本の身分と名を借りて札差から大金を搾り取る蔵宿師の問題とが中心となっています。
小籐次の剣の力の発揮場所としては菅原民部という蔵宿師の始末です。
この男は老中青山忠裕に棄捐令を出すように求めてきたりと、やりたい放題の悪行を重ねています。
また、もう一方は、三の在所に引っ込み暮らしている薫子姫と子次郎との話です。
森藩の参勤下番へ同道することになった小籐次親子は、おりょうをも伴い三河の薫子姫と子次郎のもとを訪ね、小籐次親子の旅の間、おりょうは薫子姫のもとに滞在することになったのでした。
まず、蔵宿師の菅原民部の問題は、単に旗本という身分を振りかざし無理難題を通してきた不良旗本だけの問題ではなく、老中青山忠裕の進退問題まで絡んだ話になり、小籐次としても動かざるを得ません。
といって、なんとも半端な話であり、単純に小籐次の腕の見せ所をつくったにすぎないとも言えそうな展開です。
ただ、薫子姫と子次郎との挿話は何ともほほ笑ましく、木の上の小屋で三河の海を眺める場面など、自分の子供の頃を思い出す場面でもありました。
次巻から、森藩国許での困難な出来事が小籐次親子を待っていることでしょうが、その嵐の前の静けさを描き出した一編だと言えそうです。
このように、本書での出来事はある意味薫子姫と子次郎との話だけだとも言えそうな物語でした。