金子 成人

若旦那道中双六シリーズ

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女に金を騙し盗られ、逗留を余儀なくされた岡部宿をあとにした『渡海屋』の若旦那の巳之吉は遅れを取り戻すべく先を急ぐ。小夜の中山峠も無事越えて見付宿に辿り着くが、無理が祟ったのか、街道の辻で倒れてしまう。目浚え女のおしげに助けられ、事なきを得た巳之吉だが、おしげの家にしばらく厄介になることになり―。愛嬌たっぷりの若旦那が繰り広げる、笑いと涙の珍道中!時代劇界の超大物脚本家が贈る痛快シリーズ第二弾!!(「BOOK」データベースより)

 

世間知らずの大店の若旦那の京都までの一人旅をユーモアたっぷりに描く、若旦那道中双六シリーズの第二巻目の長編人情小説です。

 


 

霊岸島南新堀にある廻船問屋『渡海屋』の若旦那の巳之吉は、祖父の儀右衛門の図りごとにはまり、後継ぎとしての成長のために京都へと旅立ちました。

前巻では小田原では船中に閉じ込められ、富士川では川止めに会い、岡部宿では道行を共にした女に有り金を持ち逃げされたりもした巳之吉でした。

そんなこんなで、本来であればひと月もあれば京都へ行ってすでに江戸へと帰りついてもいい頃だったのですが、未だ京までの行程の半分にも満たない駿河国にいます。

 

やっと日本橋から数えて二十四番目の金谷宿に着いた巳之吉でしたが、大井川の川止めがとけ、更に参勤交代の行列も重なっていたため、やっと宿を見つけた巳之吉でした。しかし、飲み屋で知り合った脇本陣からも追い立てられた参勤交代の侍と知り合い、意趣返しを思いつくのです(第一話)。

そのいたずらの後、松の葉を煎じた飲み物を飲まされた巳之吉は急な腹痛に襲われ、目さらし女の家に担ぎ込まれます。そのころ江戸ではお千代という亭主持ちの女が巳之吉を訪ねてきていました(第二話)。

目さらし女の家で養生した巳之吉は儀衛門の名代として新居宿の「黒松屋」へと挨拶に訪れますが、主の新左衛門から逗留するように言われ、断わり切れないでいました(第三話)。

姫街道との合流点からすぐの御油宿にたどり着いた巳之吉でしたが、ここで「人斬りの磯吉」という人物と間違われ、この御油宿と一つ先の金谷宿の貸元同士の争いに巻き込まれてしまうのでした(第四話)。

 

本シリーズは、基本的に落語で言えば与太郎的な人物が巻き起こすコミカルな騒動を渡海道中膝栗毛のような道中記として展開する物語を企図したのでしょう。

しかし、第二巻の本作品までを読む限りでは、人情小説とも言い切れず、かといって痛快小説というにはそうでもなく、今一つ焦点が定まっていない印象です。

基本的に各巻は四つの章でなり立っていくと思われますが、その各章が主人公巳之吉の与太郎ぶりを主張したいのか、巳之吉は単なる傍観者としてその章の登場人物の人情物語を展開したいのかはっきりとしないのです。

そんなことは関係なく、巳之吉のいい加減さからくる顛末記をただ眺めていればいいと言われればそれまでですが、そのいい加減さもまたなんとも言いにくい状況です。

今後の続巻の展開では巳之吉のそれなりの成長ぶりが描かれていることを期待したいと思います。

 

このような道中記としては、朝井まかての『ぬけまいる』や『若旦那道中双六シリーズ』の項にも挙げた 鈴木英治の『若殿八方破れシリーズ』などがあります。

前者『ぬけまいる』は、かつて「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれたアラサー三人組が突如、仕事も家庭も放り出し、お伊勢詣りに繰り出すという、女三人組の珍道中を描いた作品であり、後者『若殿八方破れシリーズ』は、信州真田家の跡取りである主人公が自分に尽くしてくれていた家来が殺されたため、本来許されない筈の仇打ちの旅に出るという物語です。

ともにユーモアたっぷりな物語であり、軽く読める作品です。

 

 

[投稿日]2020年01月04日  [最終更新日]2020年1月4日
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