未読です。
著者: 今野 敏
孤拳伝
香港の暗黒街九龍城砦でストリートファイトに明け暮れる少年・朝丘剛。独力で形意拳の一つ「崩拳」を身につけた剛は、香港に売られて死んだ母の怨みを晴らすため、日本へ密航を図る。船内での労役に耐え、上陸した少年を待っていたのは、横浜中華街の老人・劉栄徳だった。劉より中国武術の極意「功夫」を学んだ剛は、今、復讐の鬼と化す。入魂の格闘小説、待望の新装版!(第一巻 : 「BOOK」データベースより)
今野敏と言う作家は、自ら空手道今野塾を主宰しているように、自分が武道家であるために、各作品でのアクションシーンの描写が抜群にうまい人です。その人が書いた格闘(武道)小説ですから面白くない筈がない。
私が図書館の棚にあった「孤拳伝」という本を手に取ったのがこの作家との出会いでした。それから殆ど全作品を読破したのではないでしょうか。
香港のスラムで育った主人公は母の仇を探して来日する。中国武術の達人や山の民などと出会ったり、地下格闘技に出たりと、それまで習い覚えていた拳法を更なる高みに引き上げる。そして・・・。
成長物語と言って良いでしょう。本来は文庫本13冊分と長いですが、読みやすいのでその長さを感じないと思います。ただ、現在は合本されて4分冊になっているようです。
孤拳伝シリーズ(完結)
- 復讐 (旧 黎明篇・迷闘篇)
- 漆黒 (旧 烈風篇・流浪篇)
- 群雄 (旧 群雄篇・竜門篇・春秋篇)
- 覚醒 (旧 覚醒篇・沖縄篇・完結篇)
ところが、2019年2月08日現在では同じ中公文庫から全五巻の新装版として出版されています。上記Amazon、楽天へのリンクはこの新装版へのリンクです。
任侠シリーズ
『任侠シリーズ』とは
本『任侠シリーズ』は、やくざが出版社や学園の運営、更には病院経営などにまで手を出すという人気シリーズです。
『任侠シリーズ』の作品
『任侠シリーズ』について
まず、本書『任侠シリーズ』の「任侠」という文字の表記ですが、「俠(きょう)」という文字が表示されないサイトが散見されるため、Amazonの表記に合わせ、書籍に記載されている『任俠』という文字ではなく『任侠』という文字を使用しています。
本書『任侠シリーズ』の中心人物である阿岐本雄蔵は、全国のやくざに顔がきく阿岐本組の組長です。
そして、その阿岐本組の代貸が日村誠司であり、阿岐本組長の指示で出版社、学校、病院、浴場、映画館といった様々の難題に立ち向かっていかなければならない、まさに中間管理職の悲哀が描かれます。
と言っても悲壮感漂う物語ではなく、コミカルな娯楽小説です。
単純に娯楽に徹した物語として非常に良くできている面白さ満載のお勧めのシリーズ作品です。
ちなみに、この『任侠シリーズ』のスピンオフ作品として、『マル暴シリーズ』が出版されています。2024年12月20日現在では、『マル暴甘糟』『マル暴総監』『マル暴ディーヴァ』の三冊が出されています。
この『マル暴シリーズ』は、本『任侠シリーズ』でほんの少しだけ顔を出している、気の弱いマル暴刑事である甘糟を主人公としたユーモアに満ちた警察小説で、こちらもお勧めです。
また本『任侠シリーズ』第二作の『任侠学園』を原作として、西田敏行、西島秀俊のダブル主演で映画化もされています。
追記:2025年1月8日に『任侠梵鐘』が出版されました。読み次第アップします。
安積班シリーズ
『安積班シリーズ』とは
本シリーズは新設された警察署を舞台にした刑事たちの活躍を描く警察小説です。
謎解きや刑事たちの操作を描くというよりも、刑事部屋の刑事それぞれの人間性や、刑事たちの人間関係を描いているシリーズです。
『安積班シリーズ』の作品
安積班シリーズ(2025年06月05日現在)
- 二重標的 東京ベイエリア分署
- 虚構の殺人者 東京ベイエリア分署
- 硝子の殺人者 東京ベイエリア分署
- 蓬莱
- イコン
- 警視庁神南署
- 神南署安積班
- 残照
- 陽炎 東京湾臨海署安積班
- 最前線 東京湾臨海署安積班
- 半夏生 東京湾臨海署安積班
- 花水木 東京湾臨海署安積班
- 夕暴雨 東京湾臨海署安積班
- 烈日 東京湾臨海署安積班
- 晩夏 東京湾臨海署安積班
- 捜査組曲 東京湾臨海署安積班
- 潮流 東京湾臨海署安積班
- 道標 東京湾臨海署安積班
- 炎天夢 東京湾臨海署安積班
- 暮鐘 東京湾臨海署安積班
- 秋麗 東京湾臨海署安積班
- 夏空 東京湾臨海署安積班
- 天狼 東京湾臨海署安積班
『安積班シリーズ』について
こ『安積班シリーズ』は、当初は「東京湾臨海署(ベイエリア分署)」だった舞台が「神南署」、また「東京湾臨海署(ベイエリア分署)」と変化しています。
最初は「東京湾岸の新副都心構想をにらんで新設された」シリーズだったものが、バブルが崩壊して副都心の開発計画そのものが停滞していくなか現実に即さなくなったので、新たに「神南署」をもうけ安積班自体をそこに異動させたそうです。
しかし、湾岸開発が再び軌道に乗り始め、ふたたび「東京湾臨海署」、通称「ベイエリア分署」が復活したとありました(『虚構の殺人者 東京ベイエリア分署』解説 : 参照 )。
そのシリーズが今や今野敏の代表作の一つとして人気シリーズとなっているのです。
私は警察小説としてはエド・マクベインの87分署に一時期はまったことがあるのですが、組織ではなく個々人のキャラクターが書き分けられているのがその最大の魅力でした。
本シリーズを読んでいてその87分署シリーズを思い出しました。
チーム内の個々人を描写する場合、その各人をまとめる人物が更に描けてなければ面白くないのは勿論です。
本『安積班シリーズ』の場合、安積剛志警部補ということになるのですが、この安積警部補に関して言えば、細かいところにこだわり常に部下の顔色を伺う普通の人間として描かれています。
しかし、そうは言いつつも要所を締めるそのさまが良いのでしょう。今野敏と言う作家の力量が示されている非常に面白いシリーズとして大人気の作品になっているのです。
その安積班の班員を見ると、まずは安積がその内心をとても気にしている村雨秋彦部長刑事がおり、大橋武刑事とコンビを組んでおりその指導に当たっています。
村雨の指導は安積班の一番の若手とである桜井太一郎巡査にも及び、彼ともコンビを組むことがあります。
次に須田三郎部長刑事とその相棒の黒木和也刑事がいます。
須田はその小太りの外見から推測されるのと異なり、深い洞察力をもつ思慮の深い人物で、その相棒の黒木は引き締まった体形の持ち主でスポーツが得意で剣道五段の腕前を持っています。
このほか、後には水野真帆部長刑事が参加してくることになりますが、もともとはテレビドラマのキャラクターだったものが、原作にも登場するようになったそうです。
その他の登場人物としては、安積警部補に強烈なライバル心を燃やしている相楽啓警部補がおり、最初は警視庁本庁勤務だったものが、後に東京湾臨海署刑事課強行犯第二係の係長として赴任してくることになります。
忘れてならないのは、安積の警察学校同期だった警視庁交通機動隊所属の速水直樹小隊長がおり、シリーズの要所要所で顔を見せることになります。
ちなみに、本シリーズはテレビでは佐々木蔵之介主演で「ハンチョウ」としてドラマ化され、好評なようなのでご存知の方も多いでしょう。
『ハンチョウ〜神南署安積班』としてシーズン4まで、その後佐々木蔵之介演じる安積剛志の異動に伴い『ハンチョウ〜警視庁安積班』としてシーズン5、6が放映されています。
隠蔽捜査シリーズ
『隠蔽捜査シリーズ』とは
本『隠蔽捜査シリーズ』は、キャリアでありながら現場の第一線に立ち、正論を正論として通しきる竜崎伸也という男を主人公とする長編の警察小説です。
この主人公が単なるキャリアというだけではなく、警察官としての原理原則に従い、一切の忖度なく物事を判断するという、非常に珍しく、また痛快で面白い作品です。
『隠蔽捜査シリーズ』の作品
隠蔽捜査シリーズ(2024年04月23日現在)
- 隠蔽捜査
- 果断 隠蔽捜査2
- 疑心 隠蔽捜査3
- 初陣 隠蔽捜査3.5
- 転迷 隠蔽捜査4
- 宰領 隠蔽捜査5
- 自覚 隠蔽捜査5.5
『隠蔽捜査シリーズ』について
第一作目の『隠蔽捜査』は吉川英治文学新人賞を、第二作目『果断』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞長編部門を、シリーズとして吉川英治文庫賞を、それぞれに受賞しているほどのシリーズです。
清濁併せ飲む大人の対応を良しとしないで、その正論が通らないキャリアの世界を渡っていくのだからすごい。
かなりできる人なのでしょう、と思わせる設定が面白い。主人公はその性格のまま周りを巻き込んで事件を解決してしまいます。
その変な性格の主人公が何故か魅力的な人間に見えてきて、早く次を読みたいとなります。
それは主人公が堅物ではあっても、人としての正道を貫いているからなのでしょう。どこか人情小説の心の交流にも似た情感を漂わせる本書は、お勧めです。
また、第八巻の『清明: 隠蔽捜査8』からは、主人公の竜崎の勤務地が神奈川へと移り、それまでの地域の一署長ではなく、神奈川県警刑事部長という新たな地位を得て活躍しています。
このシリーズも永くなり、何となくのマンネリ感を感じていたところでした。作者もそうした声を理解されていたのでしょう。
異動先が警視庁とはあまり仲が良くないとされる神奈川県警というのも面白い設定です。第八巻では早速そうした不仲を取り込んだ構成で読ませてくれました。
新たな地位を得た竜崎の活躍が期待されます。
なお本シリーズは、陣内孝則と柳葉敏郎のコンビ、そして杉本哲太と古田新太のコンビと、局を違えてテレビドラマ化されています。