『ツナグシリーズ』とは
本書『ツナグシリーズ』は、一生に一度だけの死者との再会を叶える使者「ツナグ」をめぐる物語です。
連作の短編小説の形を取ってはいますが、特に第二弾の『ツナグ 想い人の心得』は実質長編小説と言ったほうがいいかもしれません。
『ツナグシリーズ』の作品
『ツナグシリーズ』について
ツナグとは、一生に一度だけの死者との再会を叶える使者のことです。
第一弾の『ツナグ』は、第32回吉川英治文学新人賞受賞作を受賞し、百万部を超えるベストセラーとなった作品で、2012年に松坂桃李の主演で映画化もされました( 新刊JP : 参照 )。
本『ツナグシリーズ』の主役である使者(ツナグ)は、依頼を受けると、対象となった死者と交渉して依頼者に会うつもりがあるかどうかを確認し、死者の了承が得られたら使者が面会の段取りを整えることになります。
ここで、依頼人と死者との面会にはルールがあります。
まず、使者への依頼は本人でないとだめで、シリーズ第二弾の『ツナグ 想い人の心得』第一話で示されているような他人による代理での頼みは受け付けられません。
また、死者にも依頼を受けるかどうかを選ぶ権利があり、断られればそれで終わりです。
相手が断ればその一回はカウントされませんが、その依頼者が再び使者と繋がれるかどうかは“ご縁”だから分かりません。
死者との面会は依頼者にも死者にも一度きりの機会であり、さらに一人の死者に対して会うことのできる人間は一人だけです。
依頼料はなくて無料であり、面会の日は満月の日が多いようです。
使者と依頼人が会えるかどうかは、すべて“ご縁”によります。どれだけ電話をかけても繋がらない人がいる一方で、繋がる人のところには自然と縁あって繋がれます。
本『ツナグシリーズ』の主役は渋谷歩美といい、第一弾の『ツナグ』では十七歳の高校二年生です。
歩美の両親は、彼が小学一年生の時に謎の死を遂げており、その謎がシリーズ第一弾の『ツナグ』の第四話「使者の心得」で明かされることになります。
それは、歩美が祖母の渋谷アイ子から受け継いだ「使者」の仕事にも関係していたのでした。
両親を亡くした歩美はアイ子とともに叔父夫婦のもとで育ち、シリーズ第一弾『ツナグ』では高校生として登場しています。
そして、シリーズ第二弾『ツナグ 想い人の心得』では、おもちゃを扱うメーカー「つみきの森」に勤めており、アイ子の実家である秋山家には使者の役目に対するサポートだけをお願いしているのです。
作者の辻村深月は、本『ツナグシリーズ』をライフワークとしたいと書いておられるので、もしかしたら今後も続編が出版されるのではないかと期待しています( ANANニュース ENTAME : 参照 )。
それほどに、じっくりと読むことができる作品だと思うのです。