辻村 深月

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レジェンドアニメ!』とは

 

本書『レジェンドアニメ!』は2022年3月に刊行された、アニメ業界を舞台にした270頁のお仕事短編小説集です。

2014年に刊行された『ハケンアニメ!』という作品のスピンオフ作品集であり、そこでの登場人物を主人公に据えた六編の短編で構成されています。

 

レジェンドアニメ!』の簡単なあらすじ

 

誰にだって負けたくない人がいる!ともに働きたい人がいる!待望の『ハケンアニメ!』スピンオフ作品集。夢と希望。情熱とプライド。愛と敬意ー何度でも心震える『ハケンアニメ!』のサイドストーリーを完全収録。(「BOOK」データベースより)

 

目次
九年前のクリスマス/声と音の冒険/夜の底の太陽/執事とかぐや姫/ハケンじゃないアニメ/次の現場へ

簡単なあらすじは、下記の感想の中にまさに簡単に記しています。

 

レジェンドアニメ!』の感想

 

本書『レジェンドアニメ!』は『ハケンアニメ!』に登場してきた人物を個々の物語の主人公として描かれた短編作品集です。

 

 

ここでスピンオフ作品である『レジェンドアニメ!』を読むための前提知識として、本編作品の『ハケンアニメ!』の内容を簡単に書いておきます。

そこでは「運命戦線リデルライト」と「サウンドバック 奏の石」という作品が覇権を争っています。

そして、「運命戦線リデルライト」のプロデューサーが有科香屋子で、監督が王子千晴であり、後に「サバク」と称される「サウンドバック 奏の石」という作品のプロデューサーが行城理で、監督が斎藤瞳であって、並澤和奈がアニメーターをしています。

加えて並澤和奈と選永市観光課の宗森周平の物語がさらにあり、アニメ関連業界の広さが示されています。

また、そのほかにも本書『レジェンドアニメ!』に登場する五條正臣や逢里哲哉、鞠野カエデといった人たちも登場しています。

 

その前提で本書『レジェンドアニメ!』を見ると、第一話「九年前のクリスマス」では、有科香屋子斎藤瞳並澤和奈の三人の九年前の姿があります。

第二話「声と音の冒険」では、天才アニメ監督の王子千晴の若い頃の姿が、当時はトウケイ動画音響部所属のミキサーだった現在の『運命戦線リデルライト』音響監督の五條正臣の目を通して描かれています。

第三話「夜の底の太陽」では、小学五年生の三人組の行動に絡んで若い頃のある人物が登場します。

第四話「執事とかぐや姫」は、アニメに関連するフィギュア制作会社の社員逢里哲哉とフィギュアを作る造形師鞠野カエデの物語で、並澤和奈のいる新潟県選永市の「ファインガーデン」へと繋がります。

第五話「ハケンじゃないアニメ」は、覇権を目指さない安定したアニメ「お江戸のニイ太」の若手プロデューサー和山和人の話で、斎藤瞳が登場します。

第六話「次の現場へ」は、業界人の結婚式を舞台に有科香屋子王子千晴並澤和奈らが登場し、さらに『スロウハイツの神様』のチヨダ・コーキ赤羽環といったクリエーターたちが参加しています。

 

 

ハケンアニメ!』の項でも書きましたが、アニメ業界のことは何も知らない私ですが、アニメ自体は嫌いではありません。というより私の年代にしては好きな方だと思っています。

ただ、近年のアニメは画や効果などの技術は進歩しているものの、派手になり過ぎている印象があるのも事実です。

やはり年代差はあるのでしょう。そうした中でも本書『レジェンドアニメ!』はアニメ作品を作り出す人たちの姿を描いている点で楽しく読むことができました。

でも、この世界を描くうえでのデフォルメは相当に加えてあるのだろう、とは感じます。

アニメーターが消耗品的な扱われ方をされており、中国や韓国のアニメーションに追い抜かれている現状だと何かの文章を読んだことがありますが、そうした現状は本書では全く分かりません。

もちろんそれは当然で、本書で描かれているのはアニメーション動画の監督やプロデューサー、アニメーターの姿、そして彼らのアニメに対する姿勢を描いているのであって、それ以上のものではないからです。

 

私にもこの業界で働いている身内がいるので個人的にも気なる業界ではあります。

どの仕事でもそうですが、自分が抱える仕事に対し真摯に向き合う姿勢がないとその仕事は半端なものになりがちです。

そうした意味でも本書『レジェンドアニメ!』は、どの業界にもある負の側面は捨象し、創造的な側面をみせ、その中で精一杯苦悩しながらも仲間に助けられる、ある種の理想かもしれませんが、未来を感じさせる楽しい作品でした。

また『スロウハイツの神様』の登場人物まで参加しているのには驚きました。

ハケンアニメ!』が映画化もされていることもあり、業界がより良い方向に向かえばと思いますし、続編的な作品がまた書かれることを期待半分に待ちたいと思います。

[投稿日]2022年05月19日  [最終更新日]2022年5月19日
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