有川 浩

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とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員の掛水史貴は、地方振興企画の手始めに地元出身の人気作家・吉門に観光特使を依頼する。が、吉門からは矢継ぎ早に駄目出しの嵐―どうすれば「お役所仕事」から抜け出して、地元に観光客を呼べるんだ!?悩みながらもふるさとに元気を取り戻すべく奮闘する掛水とおもてなし課の、苦しくも輝かしい日々が始まった。地方と恋をカラフルに描く観光エンタテインメント。(「BOOK」データベースより)

 

有川浩の作品らしくとても読みやすい本です。それでいて、初期作品の「空の中」のような読後の空疎感も無く、目新しい知識も盛り込まれた、それなりに読み応えのある作品でした。

 

主人公の掛水史貴は、観光立県を目指し、おもてなしの心で県の観光を盛り立てようとする「おもてなし課」に所属している県庁職員である。

しかし、「おもてなし課」に配属された職員とはいっても公務員であり、期待された独創性、積極性はなかなか発揮されなかった。

そんなとき、観光特使として依頼を受けた作家の吉門喬介からの注意を受けた掛水は、アルバイトの明神多紀の力を借りて、民間の感覚を取り入れるべく動き始めるのだった。

 

何冊かこの作家の本を続けて読んでいると、設定が少々定型的というか、登場人物の設定が少々類型的に感じられるようになりました。

つまり、仕事に関してはやり手ではあるのだけれど、こと女性に対してはどう対処して良いか分からない男と、活発で勝気な女性とのコミカルなやり取り、というパターンです。

本書ではこの定型のコンビが少し形を変えて二組出てきます。

とはいえ、よく考えると、この設定はコミカルな物語での最も基本的なパターンではあって、特に有川浩という作家に特別な類型という訳ではありませんでした。でも、やはりこの定型は少々気になるのです。

 

有川浩という作家さんの作品は、『図書館戦争シリーズ』などでは自衛隊(軍隊)、『シアター!』では演劇界、『阪急電車』では市井の人々、そして本書では県庁公務員と、面白い視点の作品が多いようです。

 

 

そして、本書で言えば公務員の職務という、作品のテーマになっている職務の内容や問題点を、具体的な場面に即して指摘していて、新たな知識や視点を提供してくれる作品でもあります。

本書に限って言えば、公務員一般の職務の普遍的な問題点としても指摘しながら本書特有の具体的な問題点を取り上げている、ある種テキストのような作品でもあります。

 

あとがきを読むと、本書の始めの掛水と吉門との出会いのエピソードは、作者有川浩と高知県庁職員との実体験だそうで、そこらから本書が発想されたといいます。そうした作者の心のうちも吉門という登場人物に託して取り込まれているようです。

それにしても、様々の方面で作者の発想の豊かさが現れていて、柔軟な思考力の大切さは普段から感じている事柄でもあり、ただただ感心するばかりではありました。

物語の面白さとは別に、そうした別な側面での面白さにも引っ張られた気がします。個人的には二組の恋物語は二の次になってしまう程でした。

 

ちなみに、錦戸亮や堀北真希といった配役で、本書を原作として2013年に映画化もされています。

 

[投稿日]2015年03月31日  [最終更新日]2020年6月29日
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