駿州沼里藩の江戸留守居役を務める深貝文太郎は妻殺しの犯人を見つけられず、忸怩たる思いを抱いていた。ある日、家中の賄頭が自殺する。遺書で公金横領を告白していた。半月後、今度は留守居役の同輩が乱心して通行人を次々に斬り殺すという事件が勃発。お家取り潰しもあり得るほどの大事件である。文太郎は殿直々にこの事件を解明するよう命じられる―。持ち前の粘り強さと機転を武器に、文太郎が事件の真相を暴く!(「BOOK」データベースより)
沼里藩留守居役忠勤控シリーズの第二弾です。
賄頭の大瀬彦兵衛が二百両を横領して自害し、その事情を知っていると思われる中間の耕吉も行方不明になった。文太郎は駿州沼里藩藩主の水野靖興から、文太郎自らの手でこの事件を調べるよう命じられる。
ところが次に、藩士の植松新蔵が僧侶や若い女らを斬殺するという事件を起こしてしまう。早速、水野家代々頼みの与力伊豆沢鉦三郎からの報告を藩主に報告すると、藩の浮沈に関わることでもあり、直接に調べるよう命を受ける文太郎だった。
前巻から五年の歳月が経っています。
本書での文太郎はやはり前巻同様、いや今回は藩主の直接の命があるぶん違うかもしれませんが、探索の手を広げていき、植松新蔵の行為の裏に隠された本当の意味を探り出します。
本書をミステリーと言い切っていいのか分からないほどに厳密な謎が設定されているわけではありません。また、主人公も人並み以上の剣の腕は持ちながらも普通のヒーロー像とは少々異なります。
それでも痛快時代小説としてはありがちであり、特別なことではないでしょう。
前巻で、妖刀「三殿守」を用いて辻斬りを繰り返していた浦田馬之助を捕らえた際、馬之介の発した「必ず苦しませてやる。」との言葉が妻の死と関わっていないとは思えない文太郎です。
そして、この謎こそがシリーズを貫く謎になるのだろうとの予感はありますが、鈴木英治という作家の思惑は分かりません。意外な展開になるかも知れず、今後の作品を待ちたいと思います。