『異変ありや 空也十番勝負(六)』とは
本書『異変ありや 空也十番勝負(六)』は『空也十番勝負シリーズ』の第六弾で、2022年1月に文庫本で刊行された、佐伯泰英自身のあとがきまで入れて351頁の長編の痛快時代小説です。
何とか生き永らえた空也が、江戸の家族や長崎の仲間たちのあたたかな眼差しのなか新たな冒険へ旅立つ姿が描かれ、しかしどこかで似た場面を見た気もする作品でした。
『異変ありや 空也十番勝負(六)』の簡単なあらすじ
3年ぶりの書き下ろし新作!
武者修行中の嫡子・空也の身を案じる
江戸の坂崎磐音のもとに、
長崎会所の高木麻衣から文が届く。薩摩の酒匂一派最後の刺客、太郎兵衛との勝負の末、
瀕死の重傷を負った空也は、
出島で異人医師の手当てを受けたものの、
いまだ意識が回復しないという。懸命の介護を続ける麻衣のもとを高麗の剣術家が訪れ、
二日間、空也とふたりだけにしてほしいと願い出るが……。目覚めた空也は何をなすのか!?
空也の武者修行が再び動き出す!(内容紹介(出版社より))
『異変ありや 空也十番勝負(六)』の感想
本『空也十番勝負シリーズ』は、一旦は第五弾『青春篇 未だ行ならず(上・下巻)』をもって、「青春篇完結!」ということが言われました。
しかし、ここに『空也十番勝負シリーズ』は再掲することになったようです。
このシリーズ再開の経緯は著者佐伯泰英本人が本書のあとがきで書いておられます。
このあとがきは下記サイトにも「「空也十番勝負」再開によせて」として再掲してありますのでそちらを参照してください。
ただ、それほど詳しいことは書いてありません。
本書読み初めからしばらくは、江戸の磐根らの心配をよそに空也の意識が戻らないままに進みます。
何とか意識を取り戻してからは今度は逆にそれまで死にかけていた人物とは思えないほどの活躍を見せることになります。
本書『異変ありや 空也十番勝負(六)』で意識を取り戻してからの空也は上海へと乗り出し、彼の地で活躍する姿を見せることになりますが、どうもどこかで読んだような印象です。
それが何に似ているのか、未だはっきりとは思い出せませんが、多分佐伯泰英の『上海 交代寄合伊那衆異聞』ではないかと思います。
この作品はこのブログを書き始めるよりもだいぶ前に読んだ作品なので内容もよく覚えてはいないので、はっきりとしたことは言えません。
ともあれ、江戸の磐根や、空也の妹の睦月も中川英次郎と結ばれることになったり、磐根のもとにいてそれなりに落ち着いていた薬丸新蔵も再びその行方が分からなくなったりと、何かと変化が起きているようです。
このシリーズも空也の物語ではありながらも、『居眠り磐音シリーズ』の続編としての趣きが強く感じられるようになってきました。
今後の展開を強く待ちたいと思います。