『アウト & アウト』とは
本書『アウト & アウト』は『矢能シリーズ』の第二巻で、文庫本で352頁の長編のエンターテイメント小説です。
優しさ溢れる元ヤクザの探偵がヤクザ内部の組長殺しという事件解決に乗り出す、面白さ満載の作品です。
『アウト & アウト』の簡単なあらすじ
探偵見習いで元ヤクザ。矢能が呼び出された先で出くわしたのは、死体となった依頼主と妙な覆面を被った若い男。図らずも目撃者となり、窮地に追い込まれた矢能。しかし覆面男は意外な方法で彼を解放した。これが周到に用意した殺人計画の唯一の誤算になることも知らずに。最も危険な探偵の反撃が始まる。(「BOOK」データベースより)
『アウト & アウト』の感想
作者の木内一裕の作品を読んだのはこの作品が初めてでした。
何年か前にこの本を読んだときのメモに「ヤクザ上がりの主人公が探偵をしているその設定がまず面白く、その被保護者である栞という小学生が効いている。全体のスピード感が小気味良く、夫々のキャラがたっていて読ませる。久々に面白い小説に出会った。」と書いています。
続きものということを読んだ後で知り、早速前作『水の中の犬』を借りて読んだものです。
できれば前作の『水の中の犬』から順に読めばさらに面白いでしょう。矢能という人間が探偵をやっている理由、矢能と栞という子との関係等の本書の舞台の背景が前作で明らかになっているからです。
というよりも、『水の中の犬』が『矢能シリーズ』の前日譚ともいういべき話であり、まだ脇役でしかなかった矢能が探偵になった理由も詳しく描き出してあるのです。
『水の中の犬』に書いたように、爽やかな読後感や骨太の小説を求めている人には向かない物語です。
ちなみに、本作『アウト & アウト』は遠藤憲一が主人公矢能政男を演じ、映画化されています。
2018年11月16日が公開日だそうで、どのような仕上がりになっているものなのか、是非見たいものです。
驚くことに、この映画は原作が“木内一裕”で、監督、脚本が“きうちかずひろ”となっています。つまり全部を一人でこなしているわけで、その意味でも興味のある映画です。