高田 郁

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蓮花の契り 出世花』とは

 

本書『蓮花の契り 出世花』は『出世花シリーズ』の第二弾で、2015年6月に299頁で文庫化された、連作の短編時代小説集です。

 

蓮花の契り 出世花』の簡単なあらすじ

 

下落合で弔いを専門とする墓寺、青泉寺。お縁は「三味聖」としてその湯潅場に立ち、死者の無念や心残りを取り除くように、優しい手で亡骸を洗い清める。そんな三昧聖の湯灌を望む者は多く、夢中で働くうちに、お縁は二十二歳になっていた。だが、文化三年から翌年にかけて、江戸の街は大きな不幸に見舞われ、それに伴い、お縁にまつわるひとびと、そしてお縁自身の運命の歯車が狂い始める。実母お香との真の和解はあるのか、そして正念との関係に新たな展開はあるのか。お縁にとっての真の幸せとは何か。生きることの意味を問う物語、堂々の完結。

 

「ふたり静」
お縁こと正縁は、第一巻の『偽り時雨』に登場し行方不明のままであった女郎のてまりを見つける。かつての記憶を失っているらしいてまりは、記憶を取り戻すも、新たな家族のもと香弥と呼ばれているてまりは、認知症の富路をおいては行けないというのだ。
「青葉風」
桜花堂の得意先の主人治兵衛が急死し、桜花堂の菓子による毒殺の疑いで桜花堂主人の仙太郎が捕縛されてしまう。桜花堂に寄宿していた正縁は、治兵衛の死の真相を調べ始めるのだった。
「夢の浮橋」
桜花堂主人の仙太郎と女将の染とが仲たがいをし、染は実家に帰ってしまう。桜花堂の大女将で正縁の実母でもある香は仙太郎と正縁との縁組を望むが、正縁は深川八幡宮の祭礼に向かう途中、永代橋の崩落の現場に遭遇するのだった。
「蓮花の契り」
永代橋崩落事故の際の正縁の姿が生き仏として評判となるものの、人心を惑わすとして青泉寺は閉門となってしまう。一方、正念には還俗と、正縁と夫婦になる話が持ち上がっていたのだった。

 

蓮花の契り 出世花』の感想

 

本書『蓮花の契り 出世花』は、高田郁のデビュー作である『出世花』の続編で、三昧聖という、死者の湯灌を職務とする主人公の姿を描いた物語です。

「死」を日常のものとする物語でありながら感傷に流されずに描ききっているのは高田郁という作者の力量を示すものでしょう。

 

前作では三昧聖の姿を正面から描いて、「死」の対極の「生」を描き出していたように思いますが、本書ではより正縁の姿を押し出して、彼女の実母との和解、そして正念との恋模様が描かれています。

しかしながらそのことが全作品に比してより通俗的になったようで残念に思ったものです。

でありながら、高田郁の物語であることに違いはなく、この作者の丁寧に構築されていく世界感は、読み手にとっても受け入れやすいと言えるのではないでしょうか。

 

ちなみに、死者を弔う職種といえば、小説では俄かには思い出さないのですが、映画では滝田洋二郎監督で、本木雅弘が主演を務め、アカデミー賞の外国語映画賞や第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『おくりびと』がありました。

納棺の場面はもちろん、主人公の小林大悟が山形の鳥海山を背景にチェロを弾く場面は美しく印象的でした。

 

[投稿日]2017年05月25日  [最終更新日]2023年3月8日

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江戸の「おくりびと」-三昧聖を描く時代小説 - ほぼ日刊時代小説
高田郁(たかだかおる)さんの『出世花』は、寺の湯灌場で亡骸を湯で洗い清めて、棺(「早桶(はやおけ)や「座棺」(ざかん))に納めるという、安らかに浄土に旅立つ準備を整える、江戸時代の納棺師、三昧聖(さんまいひじり)を描いた時代小説である。

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