『雪見酒 新・酔いどれ小籐次(二十一)』とは
本書『雪見酒 新・酔いどれ小籐次(二十一)』は『新・酔いどれ小籐次シリーズ』の第二十一弾で、2021年11月に文庫本で刊行された343頁の長編の痛快時代小説です。
『雪見酒 新・酔いどれ小籐次(二十一)』の簡単なあらすじ
日課の研ぎ仕事に精を出す小籐次親子の前に現れた貧相な浪人。駿太郎の大切な刀・孫六兼元を奪おうとして番屋にしょっ引かれたが、なんと仲間を殺して逃亡した。残された刀は、あの井上真改なのかー名刀を巡る真相と浪人の正体を追う一方で、立派に成長した息子の元服に頭を悩ませる小籐次。誰に烏帽子親を頼むべきか。(「BOOK」データベースより)
第一章 奇妙な騒ぎ
久慈屋の店先で研ぎ仕事をする小籐次親子のもとに人者たちが押しかけ、井上真改という名刀を研ぎのために預けたと騒ぎはじめた。番屋へ引き立てられて行った浪人たちだったが、その中の相良大八という人物がほかの浪人たちを殺して逃走してしまう。
第二章 活躍クロスケ
翌朝は大雪で駿太郎だけが研ぎ仕事を為しその夜も久慈屋で相良らの襲撃にそなえるのだった。ところが、相良大八なる浪人の本名も判明し、その者が所持していた井上真改は尼崎藩を巻き込んだ問題となるのだった。
第三章 蛙丸の雪見
望外山荘に戻った小籐次らは、雪景色を描きたいというおりょうを連れ、川向うへと渡り挨拶回りをなして久慈屋へとたどり着いた。
第四章 二口の真改
晦日のこの日もあい変らず雪が降り続き、小籐次は駿太郎の元服の儀式で頭を悩ませていた。文政十年(1827)の正月元旦、南町の近藤同心が連れてきた出羽米沢新田藩の用人によれば、相良大八に新田藩の有していた井上真改をだまし取られたというのだった。
第五章 駿太郎元服
小籐次は、駿太郎が乗せてきた御歌学者の北村舜藍とお紅、それに既に来ていた新八とおしんと共に、駿太郎の元服の話を始めた。その後、小籐次らは駿太郎の元服の挨拶も兼ねて、呼び出しを受けていた八代目森藩藩主久留島通嘉と会うのだった。
『雪見酒 新・酔いどれ小籐次(二十一)』の感想
相変わらずに平穏な日々を送るというわけにはいかない小籐次とその子駿太郎です。
本書『雪見酒 新・酔いどれ小籐次(二十一)』では、メインとなる事件は久慈屋の店先で研ぎ仕事をする小籐次親子に刀の研ぎを依頼したと言いがかりをつけてきた浪人たちの騒ぎから始まります。
結局は二つの藩を巻き込んだ井上真改という刀を巡る騒動へと発展するのですが、ここで登場する井上真改という刀剣は実在する刀のようです。
詳しくは下記を参照してください。
本書を通した事件というわりには、あまり大きな出来事というわけではなく、ただ井上真改という刀だけが気になる物語でした
本書では駿太郎の元服という出来事も描かれています。シリーズとしてはこちらの方が大きな出来事というべきかもしれません。
駿太郎がその体の大きさも勿論、剣の腕もずば抜けているために、まだ十四歳だとは誰も思わない成長ぶりを見せています。
しかしながらこの正月で十四歳になった駿太郎は大人になるための儀式の元服の儀を終えねばならず、それには烏帽子親が大切な役目であり、その烏帽子親を誰に頼むかが非常に重要になります。
ここで烏帽子とは「成人男性としての象徴」であり、元服する男子に烏帽子をかぶせる役目を負うのが「烏帽子親」(えぼしおや)です。( 【刀剣ワールド】元服とは : 参照 )
本書『雪見酒 新・酔いどれ小籐次(二十一)』では、最後に小籐次の旧主である豊後森藩の第八代目藩主である来島通嘉に面会することになります。
そこで、次巻からの展開に大きくかかわるであろう事柄が示されます。
ともあれ、物語として軽く読めてなお且つ面白さを十分に保っているシリーズの一つであるのがこの『酔いどれ小籐次シリーズ』です。
ところが、本シリーズもこの八月をもって終了するとの告知がありました。
六月から三ヶ月の連続刊行し、第二十五巻をもって終了とのことです。
詳しくは下記を参照してください。