『龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5』とは
本書『龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5』は、『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の第五巻の、文庫本で361頁の長編の痛快時代小説です。
家族のために遊郭にその身を売った磐根の許嫁であった奈緒を追って江戸まで帰ってきた磐根の日常が始まりました。
『龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5』の簡単なあらすじ
新玉の年を迎えた江戸深川六間堀、金兵衛長屋。相も変わらぬ浪人暮らしの磐音だが、正月早々、八百八町を震撼させる大事件に巻き込まれる。さらに生まれ故郷の豊後関前藩でも新たな問題が出来する。日溜まりでまどろむ猫の如き磐音の豪剣が砂塵を巻いて悪を斬る。著者渾身の書き下ろし痛快時代小説第五弾。(「BOOK」データベースより)
奈緒を追って長崎から江戸までの旅を終えた磐根にやっと日常が戻る。
それは関前藩の財政の建て直しであり、今津屋の手伝いであり、また南町奉行所与力の笹塚孫一の手伝いの日々だった。
まずは、関前藩のことは今津屋に関前藩の後ろ盾となってもらい、中居半蔵と共にあたらしく江戸家老となった福坂利高に関前藩の実情や江戸の町の暮らしを知ってもらうことだった。
笹塚の手伝いとしては、漆工芸商の加賀屋の家族など十五人が殺される事件があり、次に竹村武左衛門から頼まれた仕事は霜夜の鯛蔵という盗賊が絡んだ仕事となり、さらには武左衛門が仕事先から帰らないという事件が起こる。
共に南町の笹塚孫一の懐を潤すことになるが、今度は金兵衛長屋に新しく越してきたお兼という女が何かと問題を起こすのだった。
磐根故人のことでは、今では白鶴と呼ばれている奈緒が浮世絵として売り出され、そのことを知った関前藩江戸家老の福坂利高が藩の恥だとして吉原の白鶴の元へ行くと言い出すのだった。
『龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5』の感想
本巻『龍天ノ門 ─ 居眠り磐音江戸双紙 5』では、再び笹塚孫一の手により金の匂いのする事件現場に駆り出される磐根の姿が描かれます。
同時に、借財に苦しむ磐根の故郷である豊後関前藩のために、紛争する磐根の姿もあります。
また、自ら苦界に身を落とした今では白鶴と呼ばれている吉原の奈緒を見守る磐根の姿もあるのです。
そういう意味では、大河小説である本『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』の基本的なかたちに戻っているということができるかもしれません。
それは、主人公の立ち回りであり、恋物語であり、市井での暮らしの姿でもあり、その全てを普通に読ませてくれるのが本『居眠り磐音江戸双紙シリーズ』であり、佐伯泰英作品でもあります。
痛快時代小説としての型をきちんと押さえ、読み手の心を離さない細かな仕掛けとストーリーは本書『龍天ノ門』でも生きています。