樋口 毅宏

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中国から久しぶりに戻った俺を出迎えた友の死。東京、雑司ヶ谷。大都会に隣接するこの下町で俺は歪んだ青春を送った。町を支配する宗教団体、中国マフィア、耳のない男…狂いきったこのファックな人生に、天誅を喰らわせてやる。エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作、ついに文庫化。脳天、撃ち抜かれます。(「BOOK」データベースより)

日本のクエンティン・タランティーノという紹介文に惹かれ読んだのですが、とにかく「猥雑」という言葉が見事に当てはまる、漫画としか言いようがない作品でした。

池袋の東南に位置する町「雑司ヶ谷」。早稲田大学、学習院大学、日本女子大目白キャンパスからほど近くのこの町を支配しているのが大河内太郎の祖母でもある大河内泰です。この町が池袋を根城にするヤクザ達も決して足を踏み入れようとはしない町だというのです。

大河内太郎は中国から5年ぶりにこの雑司ケ谷に帰ってきます。しかし、親友の京介は既に死に、代わりに、京介に耳を引き裂かれた男である芳一がこの町のワルを束ねているのでした。太郎は、祖母の大河内泰から豪雨で5人が死亡した事故の裏を探るように命令され、そして太郎の中国行きの原因を作った男でもある芳一と対決することになるのです。

「エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作」。これは、本書の惹句の一部です。「21世紀最強」かどうかは判りませんが、「エロスとバイオレンスが炸裂」しているのは間違いありません。それも、ストーリーそのものは奇想天外と言うほかなく、その文章は言葉の選択も含め、独特に過ぎます。

難解で「エロスとバイオレンス」に満ちている、という点では、 花村萬月という作家を思い出します。この作家の作品を一つだけ取り上げてみるとすれば、『ゲルマニウムの夜』という作品になるでしょう。この物語は、主人公が保護されている教護院の中での、主人公によって振るわれる暴力や性行為を露骨に描写した作品で、芥川賞を受賞しています。エンターテインメント作品としての要素が色濃い本作『さらば雑司ケ谷』とは、同じエロスとバイオレンスとは言っても、主人公の内面の掘り下げ方が全く異なると言えるでしょうか。

本作と同様なエンターテインメント作品の延長上には 中島らもガダラの豚という作品があります。その荒唐無稽さ、物語の持つ雰囲気においてどこか共通するものを感じました。

この作品の一番の特徴は、先の惹句にもあるように「引用に満ちた」物語だということでしょう。本書(文庫版)の巻末に、「この小説は文中に表記した以外にも、以下の人物と作品へのオマージュ、霊感、意匠、影響、引用、パスティーシュで構成しているところがあります。」とあり、更にあとがきの町山智浩氏の言う数値によると「約60余」もあるネタ元を挙げてあるように、あちこちの作品のつぎはぎでできている物語なのです。

つぎはぎとは言っても、単純に文言をつないでいるだけでないことは勿論で、この作者の持つ独特な言葉のセンスとストーリーの運びを、尊敬する他の作品からの引用で構成しているということです。

ただ、私はタランティーノも好きで殆どの映画は見ているつもりなのですが、特定の場面など分かる筈もありません。また『人間交差点』『グラップラー刃牙』『北斗の拳』といったコミックなどもネタ元になっているのですが、それも引用部分は不明です。

蛇足ながら、『笑っていいとも』のテレフォンショッキングに歌手の小沢健二が来たときのタモリの「小沢健二論」についての描写の部分が、かなり評判を読んだようです。著者本人にもインパクトが強かったからこそ、本筋とは無関係に挿入したのでしょうが、この著者の手で、別途『タモリ論』という作品が出版されていて、評価が高いそうです。

[投稿日]2017年02月17日  [最終更新日]2017年2月17日
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【書評】樋口毅宏:さらば雑司ヶ谷/杉江松恋 Friday新刊チェック 2009/
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