D・R・クーンツ 雑感
この人の本は30歳代にまとめて読みました。当時モダンホラーと言われていた作風は私の好みに正面から飛び込んできてくれましたね。次から次へと現れてくる来る怪物(クリーチャー)から逃げまどい、向こう見ずにも戦いを挑む、そのタッチの虜になりました。
とにかく、この作家の作品は(私にとって少なくとも初期の作品群は)文句なく面白いです。ただ、読み応えというか、それなりの重厚感を求める人には不向きでしょう。そうした人は、ラドラムやハンターの作品をお勧めします。この作家は理屈抜きで乗っかって楽しむ作品だと思います。
クーンツの作品はホラーという分類をされるのが普通のようです。でも私はホラーという分類には若干の違和感を感じるのです。日本の小説の心理的に押してくる「恐怖」は確かに怖いと思うのですが、西洋ものでは幽霊にしても怪物にしても実体があり、正体が理詰めで、そこに恐怖の素である未知というか非日常の要素を感じないのです。
クーンツの物語世界はその理詰めの疾走感が魅力だと感じます。更に言えば、グロテスクでも無く、正体不明の異形の者との対決というパターンが私の好みと一致するのです。
クーンツは今でも現役で活躍している作家さんですが、当時の迫力は無いように思えます。先般読んだ「汚辱のゲーム」は下巻の殆ど終わりまで読んでおきながら読了できませんでした。往時の畳みかけるようなエネルギーはどこに行ったのでしょう。さみしい限りです。
ということで、紹介した本は全部80年代に出版された本だと思います。でも古くはないと思います。
もう一点。この作家の作品は多数映画化されていますが、キングと異なり、傑作と言えるものはまずないと言えるでしょう。全部B級作品ですね。いえ、いわゆるB級映画にも面白い映画は多数あるので、そのB級にも達してない作品が殆だと思っています。残念です。