人を殺し、育った修道院兼教護院に舞い戻った青年・朧。なおも修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜の限りを尽くす。それこそ現代では「神」に最も近く在る道なのか。世紀末の虚無の中、神の子は暴走する。目指すは、僕の王国!第119回芥川賞を受賞した戦慄の問題作。(「BOOK」データベースより)
1998年に第119回芥川賞を受賞した長編小説です。
本書の主人公朧(ろう)は殺人を犯し、かつて自分が世話になっていた教護院に戻ってきます。知能指数がずば抜けているこの青年が、ここに勤める仲間を暴力で圧倒し、修道女を犯し、告解と称し神父を試すのです。
近年、何かと問題となっているキリスト教聖職者による子供への性的虐待も描かれています。
エロチックでありかつグロテスクな小説です。
上記教護院の中で主人公によって振われる暴力や性行為を露骨に描写してあります。
その日本語の選択は驚愕的です。選ばれた言葉は冒頭から作品の持つ雰囲気、方向性を決定づけ、嫌いな人はその時点で手放すかもしれないと感じる程です。その言葉で死や性行為、そして暴力を語るのですから、個人の好みがはっきりと分かれるでしょう。
後に様々なレビュー等を読んでみると実際に投げ出した人も少なからずいるようです。
ウィキペディアによりますと、作者自身、結構な問題児であったらしく、教護院の描写など自身の体験に基づくところが反映しているのでしょう。他にも、ヒモとして生活していたことや放浪壁のあることなど、破天荒そのものです。
作者自らが書いているようにテーマは「宗教」です。人間の根源を問うことにもなるこのテーマだから、暴力と性は避けては通れないものなのでしょうか。
本書は「王国記」という「宗教を描く長大な作品のごく一部分」として描かれたのだそうです。作品としての好悪はともかく、人間の内面を深く追求するような文学作品を読む体力はないので、個人的にはこのシリーズは多分読み続けないでしょう。
王国記シリーズ(2015年04月01日現在)
- ゲルマニウムの夜―王国記〈1〉
- ブエナ・ビスタ―王国記〈2〉
- 汀にて―王国記〈3〉
- 雲の影―王国記〈4〉
- 青い翅の夜―王国記〈5〉
- 午後の磔刑―王国記〈6〉
- 象の墓場―王国記〈7〉
- 風の條―王国記〈8〉