これまで「三国志」に関しては、小説では吉川英治の「三国志」と柴田錬三郎の「英雄三国志」を、漫画では横山光輝の「三国志」と王欣太の「蒼天航路」などを読みました。他にも陳舜臣、宮城谷昌光他の人たちが書いていますし、漫画では三国志関係という点で言えば多数ありすぎて一々挙げられないようです。エンターテイメント作品という点では柴田錬三郎の作品が一番だったと思います。「蒼天航路」も曹操からの視点で面白く読みました。
(なお、蛇足ですが吉川英治版の「三国志」は、Kindle版では0円で読むことができるようです。)
読み手である私の側のこうした先入観のためか、個人的には北方版三国志については登場人物の書き分けに不満が残り、本書の世界に今一つ感情移入することができませんでした。三国志では多くの登場人物が活躍しますが、その個々の登場人物の個性が似ているように感じたりと、何となくの違和感を持ってしまいまったのです。もしかしたら北方版三国志が三国志の正史をベースにしているということも関係しているのかもしれません。
しかし、三国志という物語自体の面白さは言うまでも無く、北方謙三という作家の三国志の新しい解釈も印象深いものがあります。ベストセラーになっていることからも分かるように、本書の面白さもまた否定できず、読み応えのある本を探している人にはお勧めです。
ただ、別巻を数えなくても文庫本で全13巻という長尺の物語です。気楽に読むことをお勧めします。