高田 郁

みをつくし料理帖シリーズ

イラスト1
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澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋燕」。澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!(「BOOK」データベースより)

 

 

みをつくし料理帖シリーズの番外編です。

澪が去ったあとの「つる屋」店主の種市や戯作者の清右衛門の様子を描く「花だより」。
かつての澪の想い人である小野寺数馬の妻乙緒の姿を描く「涼風あり」。
澪の幼馴染みで吉原に売られた野江のその後を描く「秋燕」。
そして源斉と一緒になり大阪で暮らす澪の様子を描く「月の船を漕ぐ」の四編が収められています。

 

花だより ―愛し浅蜊佃煮
自分が助けた水原東西と名乗る行き倒れの易者から寿命を告げられた「つる屋」店主の種市は元気をなくし、戯作者の清右衛門とともに、大坂にいるお澪坊に会いに出立した。ところが、小田原宿で本物の水原東西と会い元気を取り戻したものの、箱根宿で腰を痛め、江戸へと引き返さざるを得なくなる種市だった。

涼風あり ―その名は岡太夫
御前奉行の小野寺数馬の妻乙緒(いつを)は義妹の早帆(さほ)から、数馬のかつての想い人の澪という娘のことを聞き、「出来うるならば、己よりも相手の人生を重んじるほどに、想われたかった。」という思いに囚われてしまう。そこに、今は亡き義母の言葉を思い出す。

秋燕 ―明日の唐汁
二十年前の享和の大水で淡路屋はなくなったが、野江が事実上の主人となって「高麗橋淡路屋」として再興されていた。「女名前禁止」という大阪の掟のために新しい主人を決める必要があった野江は、自分が信頼している番頭の辰蔵を相手に、自分の吉原での生活、さらには又次とのかかわりについて話し始める。

月の船を漕ぐ ―病知らず
澪の夫源斉は、ころりが去った今も体調がすぐれず、ある日倒れてしまい、澪の心尽くしの料理にも手を付けることができないでした。医者としての無力感に心が折れかけていたものだろう。「奈落の底」を味わった野江から教えられた澪は、源斉の母親から教えられた源斉の子供のころの好物を食べさせるのだった。

 

一旦は終了したはずの「みおつくしシリーズ」の番外編が登場しました。

全部で四編の物語からなる短編集です。

 

どの物語も「みおつくしシリーズ」そのままの話であり、人情話しとして心温まる話ばかりです。

私の好みからすると若干物足りない話でもありましたが、全体的に好ましく読み終えました。

 

物足りないという点を挙げるとすれば、一つには第一話の「花だより」では“偶然”の出来事が話の要になっているところです。

またもう一つは、「秋燕」での野江の物語での、摂津屋ら江戸のお大尽たちの遊び相手として野江が選ばれ、野江の年季明けまでを買い上げてくれていたことであり、かなり野江に都合がよく、いくら短編の人情噺とはいえできすぎです。

 

とはいえ、高田郁らしい人情ものとして好ましい作品集であったことは間違いありません。物語の全体が完璧に好みに合致する話などそうはあるはずもなく、特に本書などは人気シリーズの思いもかけない番外編として気楽に楽しむことができました。

本作品をもって「みをつくしシリーズ」も終わるとの言葉が、本書巻末の「瓦版」にありました。

まだまだ、澪の物語を読みたい気もしますが、それでは作者としてもけじめもつかないということでしょう。残念ですが、高田郁の新しい物語を楽しみにしたいものだと思います。

[投稿日]2019年05月04日  [最終更新日]2019年5月4日
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